第2話 フォカヌポウ
次に目が覚めると、そこはラノベとかで見たことのある屋敷そのものだった。
(なんか視点が低い…)
そう思って自分の体を鏡で見ると、黒髪黒目の冴えない顔の男の子が目に映った。
身長から察するに4~5歳くらいだろうか。
突然の出来事に困惑しているとふいに脳内に謎のアナウンスが流れた
「スキルを獲得しました。」
男性とも女性とも取れないその声を聞いてさらに困惑していると頭の中にイメージが浮かんできた。ニュースとかでよく見るCGで作られた映像によく似ている。
そうして僕は指で何かをつまむような動作をすると、おそらく僕のものであろうステータスウィンドウが目の前に現れた。しかもなんか質量がある。だが宙に浮いている。触ってみるとだいぶふにゃふにゃだ。水にぬれて溶けた用紙くらいふにゃふにゃ。そんなふにゃふにゃした謎の物質に目を通してみる。
アレイ・マストラル/貴族(少年)
任意スキル
・ステータス確認
常時スキル
翻訳(日本語)
と書かれている。おそらくこのウィンドウを見るにアレイ・マストラルが僕の名前だろう。というか本当に貴族になってるじゃん…
と、自分が転生したのだと実感していると、突然部屋のドアが開く。
開かれたドアの前にはダンディーな男性が立っている。僕はなぜかこの人を知っている。この世界での僕の父親だ。
お父さんは僕のことを見て、びっくりしたような表情で
「アレイ…お前いつの間に立てるようになったんだ?しかも自分で立って歩いているじゃないか!昨日までハイハイしかできなかったのに!」
と、僕の頭をワシワシと撫でた
「わっ、父さん痛いよー。」
と、言うと
「喋ったあああああああああ!?」
と、またしても大騒ぎ
「すごいぞアレイ!お前は天才だ!さっそく母さんにも連絡しないと!おい!ムズレット!」
と、専属の使用人を呼び出すと
「はっ」
初老のおじいさんはそう言ってすぐにその場からいなくなった。
僕の父グラン・マストラルはこの世界でも名の通ったお金持ち…貴族の家の大黒柱だ。僕たちがこうして裕福な暮らしをしているのも、9割彼のおかげといっても過言ではない。のこり1割はというと…
「喋ったくらいでいちいちうっせーんだよ、ジジイ。」
「フン、下らん。」
と、奥の部屋から出てきた兄、金髪のいかにもヤンキーそうなビジュアルの次男バイス・マストラルと灰色の髪をボサボサにした長男グラセ・マストラルのおかげだ。彼らは貴族の息子として庶民に対して高圧的な態度をとったり、他の貴族を脅してお金を得ていたりとめちゃくちゃしてる。なので世間からは「陽気な貴族のクソ兄弟」
と言われている…記憶がある。
「…お前たちには関係のないことだろう。」
と、普段陽気な父が苛立ちをあらわにするほどこの親子の仲は険悪だ。
「ケッ、…おいクソガキ、ちょっとうまくいったからってあまり調子に乗るんじゃねぇぞ。」
「は…はい、わかっております。」
「ならいい。」
と、僕にもこんな態度だ。だが僕はとりあえず従っておく。そうすれば何かされることもないだろう。…多分。
少し時を飛ばして7年後。12歳になった僕に新たな出会いが訪れる。
「入るぞ」
と、父親が半ば強引に入ってくる。
「?何か…って、ええ!?」
と、僕は話す途中で驚愕の声をあげる。それもそのはず、お父さんの後ろには僕と同じくらいの年齢であろう綺麗な紫の髪と僕と同じ黒目のメイド服を着た女性が立っていたからだ。
「父さん…そんな趣味があったんだね…」
「ちゃうわい!」
と、茶番をした後、気を取り直すように「ゴホン」と咳払いをした後
「お前の専属メイドだ。ほら、挨拶をしなさい」
「メイ・ロステイルです。まだまだ未熟者ですが、何卒よろしくお願いします。」
と、慣れない様子で挨拶をしてきた。
「あ…ああ、よろしく…」
僕も急な展開に困惑しながら挨拶をする。これが僕の人生において一つ目の大事な『イベント』だった。
二回目の大事な『イベント』が起こったのは、18歳になったとき。この世界では18歳になると「固有スキル」なるものが解放される。ついでだしこの世界の常識についても説明しよう。
まず、「固有スキル」についてだが、これはその名の通りその人だけが持っている誰にも真似できないスキルのこと。このスキルが強いと称えられ、弱いと差別を受けたりする。例としてメイの固有スキルは「獣化」
あとは…冒険者のことについても話しておこう。この世界にも冒険者という職業の人たちがいる。さらにその冒険者の中にも「剣士」だったりとか「魔法使い」だったりとかがいる。そしてこの世界の各地に「冒険者ギルド」というものもある。この冒険者ギルドの中でもっとも優れた能力を持つ人間が「勇者」とされ、さらにその「勇者」が4人集まる「勇者パーティー」がある。その勇者パーティーが、この世界に蔓延る魔物を倒したり、魔王討伐に赴くのだ。別に勇者パーティーでなくとも魔物を討伐していいし、魔王討伐に行ってもいいのだが、魔物を倒すだけならともかく、魔王を討伐するにはかなりの腕が必要だ。そんじょそこらの冒険者じゃ相手にならない。
話を戻してついに18歳になる8分前だ。僕含め周りにいるお父さん、メイ、その他使用人数名はソワソワした状態で待っていた
「ついに…だね。」
と、メイが話しかけてくる。あの後同い年ということが発覚したので僕のほうから「別に無理に敬語で話さなくてもいいよ。」と言った。
「ああ…やばい、なんか緊張してお腹痛くなってきた」
「それはトイレいってもらって。」
「いってくりゅ」
と、僕はトイレに行った。
数分後
「アレイ君!?もう18歳になるまで34秒だよ!?」
「おい、アレイ!そろそろ出てこないとヤバいぞ!」
「チョット待って…マジで止まんない!何がとは言わないけどマジでやばい!」
そんな感じで騒いでいると突然脳内にいつか見たイメージが流れ込んできた。
「あっ…」
「うっそでしょマジで!?トイレでスキル判明しちゃった!?」
「さすがは俺の息子…庶民では真似できないことをやってくれる…」
うん…ホントにゴメン。
「と…とりあえず試してみるね?」
「とりあえずトイレから出てきなさい。」
と、父さんから至極まっとうな指摘をされたので、とりあえずトイレから出て、
「気を取り直して…」
右手に魔力を込め、呪文を詠唱する。
「…フォカヌポウ!」
右手が輝き、そしてその光の中から何かが生成された。
…………ピストルだ。まさかこの世界に来てまでこいつの姿を見るとは思わなかった。そして「固有スキル・銃火器召喚を獲得しました」というアナウンスが聞こえた。
父さんは僕の手に握られたピストルを見て
「なんだ、それは?」
とたずねてきた。もちろんこの世界に銃なんて存在しない
「ええーっと…ピストル?」
「何の用途で使うの?」
「…遠距離攻撃?」
と、曖昧な回答をしていると
「ヒャーッwwwんだそれwww」
と、次男バイスが運悪くこちらの部屋に入ってきた。
「ピストル…っていうんですけど」
「何のために使うんだよw」
「攻撃です。」
「へー…おもしれえ、ちょっと俺に使ってみろよw」
と、バイスは笑いながら距離を取る。
「じゃあ遠慮なく…」
日頃の恨みがあったので躊躇なく引き金を引いた。だが…
「ブッハハハ!使えねー!w」
傷一つつけられなかった。その代わりに「常時スキル・射撃ダメージ上昇レベル1」を獲得しました。レベルのあるスキルはスキルを発動すればするほどレベルが上昇し、レベルに応じて効果も強くなります。と立て続けにアナウンスが流れた。おそらく撃てば撃つほどダメージが上がるのだろう。
だが
「ホントに使えねーなwお前みたいなクズはこの家にはいらねーんだよw」
バイスはそう言って自分の部屋に戻っていった。
「まあ…ドンマイ!きっとまだ強くなるよ!」
「そうだ!俺も最初はスキル弱かったんだから、お前も強くなれるさ!」
「そうだね。この射撃ダメージ上昇ってスキルもレベルが上がれば…!」
と、なんとか希望を見出し、今日は解散するのだった。
異世界鉛玉貴族∼異世界に行っても銃火器は強かったw~ 自称漆黒(笑) @12534
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