第28話 クリスマス仕様
十二月二十四日って、前日までは普通の日だと思ってた。
いや、思ってたというか、思おうとしてた。
別に恋人と一緒に居るわけでもないし、家族と豪華な料理を食べるわけでもない。
まぁケーキが出てきたりはするけど、それを除けば普通の日だった。
夜になって、布団にに入ってスマホの画面を暗くしたあとでようやく心臓が騒ぎだした。
二十三日の夜である今、眠れっていうのが無理な話。
明日ちゃんと家出れる? なんて言う? プレゼント忘れてないよね? これ渡すの、重くない? 重い? いや重い? でも渡さなかったら泣くのは私じゃん?
そういう言葉が頭の中をぐるぐると回っている内に朝になっていた。寝てないわけじゃないけど、寝た感じはない、っていうやつ。
カーテンの隙間から白っぽい光が入ってきて、外はもう冬休みの朝っぽい静けさだった。
通学路の方から聞こえる、自転車の音や学生の喋り声ががない。それだけで学校が休みだってわかる。
スマホを見る前に、まず自分の机の引き出しを開けた。
プレゼントはそこで待機してる。小さい袋に入れたリップバームと、もうひとつ、どうしても入れちゃったもの。
リップは普通に建前のやつ。
もうひとつは、普通に嬉しいのギリ手前で止まってくれるかギリ越えるか、というラインを全力で探したやつ。
小さめのハンドクリーム。冬限定の、ミルクの香りのやつ。
手繋ぐときに、さっちょんの手が最近ちょっと乾燥してるなって思ったから。それだけ。ほんとにそれだけ。
だけどそれって、手をちゃんと触って観察してますって告白してるのと同じじゃない?
バレなきゃいいんだけど……私の考え過ぎか?
私は袋を持ち上げて、ぐっと自分の額に当てた。
……ダメだこれ。変わりが効かない。これ以外もう考えられない。
つまりこれで行くしかない。よし、行く。どうにでもなれ。
スマホが、同時に震えた。
『起きた?』
その通知は、私の頭の中でいっぱいのさっちょんからだった。
『起きた』
私は机の前に棒立ちのまま返信する。
『良い子』
『朝は得意なので』
まぁ、楽しみと不安で寝れなかったんですけどね、と自分で自分を少し笑ってみる。
『あと、何時にくる?』
『午後? 二時くらい?』
『二時半でお願いしてもいい?』
『いいけど、なんで?』
『部屋片付ける』
『片付いてるじゃんいつも』
『クリスマス仕様にしたいの』
そっか、今日は私の日、である前にクリスマスなのだ。
クリスマスツリーを飾ったり、壁にデコレーションなんかしたり。一年に一回しかないそうゆう日だ。
『じゃあ2時半行く』
『待ってるね』
その文字を見ると、私の中で一気に慌ただしいさが現実になった。
2時半か。
あと何時間?
着てく服を考えるのと、メイクをして……考えるだけで時間が溶ける。
制服じゃない日の私の私服は、だいたい2パターンしかない。ゆるいフーディにスキニージーンズか、ゆったりニットにスカートとタイツ。
どっちがいいんだろうって考え始めて、始めたらもう止まらない。
フーディは楽。部屋でごろごろしてても違和感ない。あと、さっちょんが「着ぶくれしてるきいちゃんかわいい」と言ったことがある。
でも、ニットとスカートは女子っぽい。冬の女子って感じ。
私としては女の子としてちゃんと見られたい。可愛いって言われたい願望がある。すごくある。
鏡の前で両方着てみて、私は一旦座りこんだ。
なんだこのイベント。なんの恋ゲー? 選択肢出すな。分岐ルート作るな。
最終的に、私はニットとスカートを選んだ。
決め手は、可愛いってだけ。写真に残すわけでもないのに、なんでこういうとき女の子は見た目をちゃんとしたくなるのか、人間って不思議。
時間ギリギリになって、私はリップとハンドクリームの袋をトートバッグに入れ、家の廊下に出た。
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