ダンジョンの救助部隊
結城一
第一章 ダンジョンエリート
第1話 救助部隊
「シロイ、救助要請が来た。至急、ユートと情報塔へ出向いてくれ」
むさ苦しい髭をかき分けて口元から急いでつむぎ出された言葉に溜息をする。
「ユートは食堂にいる。引っ張って行くからすぐに行くと伝えといて」
大男が頷いたのを確認してから部屋のテーブルに置きっぱなしの私の鎧を手に取る。長年愛用してきたモンスターの革を使用した物だ。少し赤み掛かった茶色い革は何層にも折り重ねられて作られ、非常に丈夫で軽い。これから出向くダンジョンでは金属製の鎧は危険である。音が響いてしまい周囲のモンスターやトラップが作動してしまう事もある。また金属に反応するモンスターもいるので革の方が安全なのだ。柔軟性と静かさを備えている事、それはここのトラップに特化したダンジョン内ではとても重要である。
細身の黒シャツと黒ズボンの上に装着していく。最後は革のブーツ。細身の服は好きである。隙間が非常に狭いトラップも多い地下では無駄な幅を取る物は出来るだけ避けたい。
私とパートナーのユート。私達はとある最上級レベルに認定されているダンジョンの真横にあるダンジョン情報塔に所属している。いわゆるここのダンジョンの調査と救助を行っているのだ。サーチ・アンド・レスキュー。私とユートは逃げられない冒険者を探し出し、確保、そして保護する救助部隊の隊員だ。ダンジョンのエリートである。救助要請は中階層までは人伝えだったり伝書モンスターや伝書羽
私はシロイ。この情報塔唯一の女性救助隊員である。
寝泊まりしている部屋のドアから出て、すぐ隣の食堂へと入る。一番奥のテーブルを占領している大男を見る。
「要請が来たぞ。さっさとその口に詰め込め」
ユートはげんなりした表情で私を見上げる。
それもそうだろう。
ここの食堂は絶品の別名を持つ食堂だ。今回の注文も見るからに相当楽しみにしていたのだろう。大量の色とりどりに並べられた大皿が彼に食べられたがっている。問題は何故か彼がここに来て注文する度に要請が来るのだ。今回も異例ではない。もはやここまで連続して起こるとジンクスでしかない。可哀そうに未だにまだゆっくりと味わった事がないそうだ。そんな彼に私はいつも「どうせ要請が来るから食堂の飯はテイクアウトにしろ」と言っているのに今回も店内で食べようとしていたらしい。
――――だからいつも言っているのに
ゆっくりと味わうのを諦め、五分で全てを平らげたユートと共に情報塔の監視室へと出向く。
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