伝説の勇者が闇堕ちした日、ポンコツは爆誕する
空木卯々
序章前編
◇◇◇◇◇
伝説の勇者が闇堕ちした日、ポンコツは爆誕する。
◇◇◇◇◇
魔物は見た。
輝く白金の髪を靡かせる剣影。
それは、この魔物が誕生したばかりの頃の
恐怖に刻まれた過去の記憶…
かの影は剣を携え、
突如として現れ、
大地を破滅させていく…
千年の大樹を軽く薙ぎ払い、
巨大な獣の魔物が複数で襲いかかろうと、
一閃のうちに全滅させ、
森の妖精らの遠距離攻撃さえ、
剣圧にて吹き飛ばす。
深い迷いの森は破壊され…
高山が連なる谷間の人外共の域には
もはや、魔物の肉片しか存在しなかった。
白金の剣影者の歩みは止まらず
更に進めば、
人間達の集落もあるだろう。
世界の仲裁者である竜は
此度の者の行いを看過できず、
歩みを止めるべく、立ち塞がるも…
あろう事か、
白金の剣影者の、眩い光の如く
速さの剣撃に貫かれ、戦闘不能となる。
世界屈指の強さである竜さえも
太刀打ちできない、この存在…
ならば、人間の冒険者ならどうだ?
さもあらなん、竜でさえこの様だ!
ならば…魔王様ならどうだろう?
いや…
あのお方は突如として消えたらしい。
勇者との最終決戦後に…
魔物である自分は、誕生したばかり。
余りにも弱く、身を潜め
災いが過ぎることを願うばかり。
ああ…
この剣影の災者を、止められるなら、
魔物の矜持は折れるも、それでも良い。
勇者が災いを止めてくれないだろうか…
人間共が讃える英雄勇者…
我ら魔族の宿敵…
されど、最強の者共…
光の剣士、そんな渾名だったか?
勇者一行にも確かに剣士はいた。
奴なら、この災者を止められるかもしれない
…藁にも縋る思いで魔物は懇願するが…
災いの剣影はすぐそこに迫る。
「ココマデカ…」
魔物が諦めかけた時…
神に近しい大いなるチカラを感じた。
と、時を同じくして…突如
静寂は訪れた。
何故か、災いの剣影者は消え、
後に残るは魔物の骸のみ…
悪い夢であったかのように。
それは、この魔物の数百年前の記憶…
なぜ、そんな古い記憶が蘇ったのか?
それは、今、己の目の前に
白金の髪を靡かせた剣影の者がいるからだ!
久しく忘れていた恐怖!!
あの白金の髪!そして剣…!
まさか…
まさか、かつての災い者なのか⁈
魔物は恐怖で強張る体を叱咤しながら、
剣士の行動に注視するが…
◇◇◇◇◇
(第一部一章序章中編へ続く)
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