スギ

青城澄

スギ


肩に金色の太陽をかついで

まっすぐに登りなさい

手を取り合って


ほら

向こうの荒れ野では

天から落ちて粉々になった月を

アリがせっせと運んでいる

暗い土の巣の中で

傷ついた月の哀しみを

ひそやかに癒すために


夜のしじまに隠れて

声もなく働くアリたちの

きまじめな営みを

邪魔してはいけない

いま少し高台に登って

静かに待てばいいのだ


ほら もうすぐ

天と地の境の

ひくいひくい窮みで

ああ

リンドウの空をかすかに裂く

あえかな光の傷のように

ゆっくりと月が目覚め始める


その時を待とうわたしと共に

天と地をつなぐ一本道のように

まっすぐなスギの木の

そびえたつこの丘で






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スギ 青城澄 @sumuaoki

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