埋もれた名作の一つ。
題名で損をしている。読めば独自のユニークさに由来すると理解が及ぶが、初見では数ある転生ものと区別がつかない。
湿度の高い感情が好きな人は読むべき。
様々な状況が交錯して収束する大団円至上主義も読むべき。
難点は主人公の独白する行動原理に共感出来ない部分がたまにあること。自縄自縛が多く、読者視点では非常にもどかしい。ここで脱落しそうになった。
最後まで読めば評価は爆上がりするだろうが、恐らく最後まで読まないか読めない層がいる。最高にワクワクする緊張感ある始まりと、最高にもどかしい伏線埋設の中盤と、最高にスッキリする伏線回収の終盤である。
第1話冒頭の数行で、この作品の解像度の高さが分かる。「縄は手首の骨の角を選んで締まっている。勝手に仕事を覚えるやつだ」。この一文で、主人公アシェルのものの見方と、彼が置かれた状況と、語り口の温度が全部伝わる。処刑直前の恐怖を「やっぱり俺も死ぬのが怖いのかよ」と自嘲で処理するあたりも含めて、一話目にして既にキャラクターの輪郭がくっきりしている。
この作品が巧いのは、「転生・憑依」系のお約束を出発点にしながら、描かれる内容がほぼ全て「バレないための観察と偽装」という、ひたすら地味で緊張感のある作業だという点だ。兵士の服の袖の向き、槍の受け取り方、呼び方の一人称、折り畳みの手順——そのひとつひとつを盗み見て真似して、ボロを出す度に舌を噛んでやり過ごす。その繰り返しが、妙に面白い。盗賊出身という過去が、観察と模倣の能力という形で説得力を持って活きているのも好ポイントだ。
ルシアとの関係性の起点も上手く設定されている。冷静で抜け目がなく、世話を焼くのは連帯責任のせいだと自分に言い聞かせているような女。アシェルが「名前は重い。呼べば、そこに線が引かれる。線は、逃げるときに引っかかる」と内心で唸りながらも「覚えた」と言うあの場面に、この先の因縁が全部詰まっている。
全10章121話・完結済み、というのが今から読む人間には何より嬉しい。
死んでも別の人間として生き返る主人公が色んな人の脳を焼くお話です。ヤンデレものに近いです。
ただ作者の好みも相まって、恋愛感情薄めで執着が全面に押し出されている作品でして、珍しい作風です。
生き返るたびに周囲の人の脳を焼いて、生き返るたびに周囲の人の脳を焼いて……という素晴らしい流れとともに、上記のような独特のジメジメさが合わさって唯一無二のものとなっております。
またストーリーも最初から最後まで、丁寧に作られている印象を受けました。すべてにきちんと理由をつけられております。
ヤンデレ好きや死に戻り好きな方には特におすすめの一作です。