修理屋のフィクサー

あずまや

　総合共生（そうごうきょうせい）高校——通称『共校（きょうこう）』。

　時代の流れに乗り、多様性を最も重視する、最新の教育理念を掲げる学校だ。

　ここにはLGBTQ、外国籍、発達特性を持つ生徒など、幅広い背景を持つ生徒が集まり、同じ場所で共に生活する。

　様々な個性を持つ人々と関わることで、社会への適応力を身につけることを目的としていた。だが、異なる個性と価値観が渦巻く環境では、摩擦を避けることはできない。

　古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスは言った。

「万物流転——この世のすべてのものは常に変化し続け、とどまることがない」と。

　人間関係もまた流転する。

　今日築いた友情が明日も続く保証はなく、修復したはずの関係も、すぐに新しい歪みを生み出す。

　学校が掲げる「共生」の理念の裏側では、

　この絶え間ない変化に取り残された生徒たちが、静かに心を擦り減らしていく。

　その「擦り減り」は、学校側が対処できる問題なのか。

　いや、教師の視点や行動だけでは、もはや届かない領域だった。彼らは指導者であっても、生徒の内側に存在する壁を越えることはできない。学校の運営陣は、この見えない問題がいつか校内のシステム全体を機能不全に陥らせることを恐れた。

　だから、彼らは決断した。

　教師ではない、生徒自身に、その歪を修繕させるという異例の試みに。

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