はよ寝ろ

衣ノ揚

はよ寝ろ

 カーテンを閉めていたから、誰も雨だって教えてくれなかった。

 甘ったるい頭の痛みだけが腑になまりを落とした。


 誰かが置いてった紅茶。期限を誰そ知る。

 バレなければなんたら、とかは私ですら知っている。

 思考が言葉を追い抜いて、どっかの青に消えてった。


 カップから伝わる温もりが指先に伝播して、さも、自分が優しいと錯覚しそう。

 そうはいかないと、罪悪感がGOと言う。ちびっこ達が集まって、蓋をキュッと、閉める。次の人のことなんて、考えないほど、固くキツく首を締める。

 雨粒が窓にあたって音を立てたなら、もう少し早く現実に戻れたのに。


 自身の感情を身体から分離させ、他責する。繰り返して、絆創膏だらけの人になったとて、にじまない血は傍から丸見えだった。


 風呂にそのまま入れば、水垢が鏡を端から蝕むように、乾燥した皮膚に水が染みていく。

 濡れて剥がれて、分解して。

 細菌感染の防止より、ほんとに私に必要なのはビタミンDですか。

 私という菌が住み着いているのに、世界はまだ皮膚科にいかないのですか。

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はよ寝ろ 衣ノ揚 @koromo-no-yogurt

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