第八章:竜族の姫との出会い

北の国境地帯での任務を終え、蓮たちは王都へ戻る途中だった。


その道中、ある山岳地帯を通りかかった時のこと。


「助けて……」


か細い声が聞こえた。


「誰かの声だ!」


リィナが耳をぴんと立てた。


声のする方へ向かうと、そこには一人の少女が倒れていた。


だが、普通の少女ではない。


背中には小さな翼があり、頭には二本の角が生えていた。


「竜族……!」


エリアナが驚いた。


竜族は、この世界では伝説の種族。滅多に人前に姿を現さない。


「怪我をしている!」


蓮は少女に駆け寄った。


「大丈夫ですか?」


「う……」


少女は意識が朦朧としていた。


蓮はすぐに料理を作った。


『万能回復スープ』。


あらゆる怪我や病気を治癒する、最高級の回復料理。


「これを飲んでください」


少女の口にスープを流し込む。


数分後、少女の顔に血の気が戻ってきた。


「あ……れ?私……」


「気がついた!よかった」


少女は蓮を見つめた。


「あなたが……助けてくれたの?」


「はい。怪我は大丈夫ですか?」


「ええ、もう平気。ありがとう」


少女は立ち上がった。


「私はセリア。竜族の第三王女です」


「王女様!?」


一同が驚いた。


「なぜ、こんなところに一人で?」


「それが……追われているのです」


セリアは悲しそうに言った。


「私たちの国で、クーデターが起きました。兄が王位を奪おうと、父を幽閉したのです。私は逃げてきたのですが、追手に襲われて……」


「なんてことだ……」


「お願いです。私を匿ってください」


セリアは蓮に頭を下げた。


「もちろんです。僕たちで守ります」


「ありがとう……優しい人」


セリアは涙を浮かべた。


こうして、竜族の姫がパーティーに加わることになった。



* * *


王都に戻った蓮たちは、王にセリアのことを報告した。


「竜族の王女か……これは大変なことになったな」


王は深刻な表情を浮かべた。


「竜族は強大な力を持つ種族。彼らと敵対するのは避けたいが、かといって王女を見捨てるわけにもいかん」


「陛下、僕たちで竜族の国に行き、事態を解決してきます」


蓮が申し出た。


「お前が?しかし……」


「レンなら大丈夫です」


リオンが言った。


「彼は、もう僕たちと同じくらい強いんです。いや、それ以上かもしれません」


「そうか……ならば任せよう」


王は頷いた。


「竜族の国、ドラゴニアへ向かってくれ。そして、王女の父を救い出すのだ」


「はい!」


こうして、蓮たちはドラゴニアへ向かうことになった。

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