アイデアマンが会社を救う
猫ララ
第1話 アイデア男
俺の名前は、
今日も朝から会議だ!おそらく一日中続くのだろう。もちろん休憩時間はある。それでも会議というものは眠くなるので好きではない。
だが、この俺がこの部署に来たからには、会議なんてものは、すぐに終わらせてやろう!何と言っても、この俺はアイデアマンだからだ!
そんなわけで、いつも延々と会議を長引かせて何の成果も出さない企画課に、俺は社長の特命を受けて密かに配属された。
社長の座右の銘は、コスパ重視&タイパ重視だ!俺はこの無駄に時間と金を浪費する部署を改革するのだ!
そして、これから会議が始まる。
「おはようございます。これから会議を行います。今日も一日よろしくお願いします」
「今日の議題は、会社の存続についてです。
こんな感じで、いつも会議が開かれる訳なのだが、何の役にも立っていない。そこに俺の出番が来たわけだ!
「はい、Aさん」
「うちの車は燃費が良いことで、ユーザーからは大変評判が良いと我々社員はアンケートで知っています」
「まあ、デザインも格好良いですし、そのうち上向いてきますよ!」
おいおい!なんて平凡な事を言っているのだろうか?いつもこんな感じなのか?
だとしたら、俺が何かお手本になることを言ってやらねばなるまい!
「あの、私から意見を述べさせていただきます!」
「
「皆さんは、いつも時間を無駄にしているようなので、今日はアイデアマンである私が、この会議をすぐ解決しますのでご安心ください!」
「おお、これは頼もしい!うわさで聞いたことがあるよ!君が
どうやら課長は俺の社内での評判を聞いているようだ。
俺が手柄を立てて、課長になる日は近いだろう。まあ簡単な案件だな!
そんな事を考えている時に課長が小さな声で「今日は、どうしても定時で帰らねばマズイ」
俺に課長のひとりごとが聞こえた。そんな俺も今日は外せない用事がある。何としても定時で帰らねば、一生後悔する事になる!
周囲からは、あまり良い反応が見られない感じがするのは、気のせいだろうか?みんなそんなに会議が大好きなのか?俺は早く終わらせたいのだが。
「はい、ではBさん」
「私はこの前の日曜日に、息子と釣りに行ってきましたけど、我が社の車は、とても乗り心地が良いと家族にも大好評でしたよ!」
何だ!今なんて言ったんだ?世間話か?やめてくれ!いつもこんな調子なのか?
「はい、それではCさん」
「私はこの前、高速道路を最高速度で、どれくらい燃費が変化するのか挑戦しましたけど、特に乗り心地に問題は無く、加速スピードも問題ありませんでした!まあ、ポルシェには負けちゃいましたけど」
おい!この人は危ない人だなあ!逮捕されたら我が社の信頼が揺らいでしまうではないか!ダメなひとだなあ。しかし、会議室は大いに盛り上がっている。
「はい、ではAさん」
「私なんか、先週、自分の前を走っている車のマフラーから黒い煙が出ているところを見ちゃいましたよ!」
「あー、それ結構この会議に出てきますなあ!はは・・・」
何かつまらないなあ!俺は今日、定時で帰って今期新しく始まったアニメをリアルタイムで見るという使命が課せられているのに。
課長も暗い顔しちゃっているのが、みんなには、分からないのかなあ!
「それではCさん」
「私はこの前、パーキングエリアでガソリンを入れたんですけど、まだガソリンの価格は下がりませんなあ」
「あはは!おっしゃる通りで」
「あの、皆さん!もっとマシな意見はないのですか?私はどうしたら、うちの自動車がもっと人気が出るのか、そういった話をしたいのですが!」
「まあ、相出さん。そんなことを言ってしまったら、この会議が早く終わってしまうではないですか!まだお茶の時間にもなっていませんよ!」
はあ、お茶か。お茶をみんなで飲んだら終わるのかなあ。これは?今度から最初にお茶を用意する事にしよう。
「Bさん、どうぞ」
「えー、先ほどマフラーから何やら黒い煙が出ていると言うお話を聞きましたが、私の意見といたしましては、車のバンパーに空気清浄機を取り付ければ問題ないかと思いますが!いかがでしょうか?」
おお、やっとまともな意見が出てきたな!よし、ここで俺の出番だな!
「えー、いま大変良い意見が出ましたので、私から付け加えさせていただきます。私は自動車の製造工程において、塗装の工程でアニメの絵柄を取り入れたいと思います!」
どうだ、俺のナイスアイデアは!みんなびっくりしているじゃないか!
課長なんて喜びの笑みを浮かべているぞ。そんなに俺が必要なのか。まあ、これで会議は終了だな!
何やら周囲から笑いの声が聞こえて来るのだが。
その時、突然、課長が立ち上がりみんなに何か言い始めた。
「えー、相出君から良いアイデアが出たので、今からちょうどお昼になりますので、今日の会議はこれで終わりにします」
「それでは皆さんお疲れ様でした」
こうして、今日の会議はいつもより早く終わった。みんなは、それぞれ自分のデスクに戻ったようだ。これなら定時で帰れるぞ!
そして、俺は目的を果たした。無事に楽しみにしていたアニメを見ることが出来た。
しかし翌朝、なぜか、課長から呼び出しを受けた。何かマズイことをしたのかと思ったのだが、課長からお褒めの言葉をいただいた。
「いやあ、ありがとう相出君。実は私も昨日どうしても、見たいアニメがあってなあ、助かったよ!」
「はっ、アニメですか?私も実はどうしても見逃せないアニメがあったので良かったです!」
「キミも見たのかね?例のアニメを!今期は大人気だからねえ!」
「はい、私もあのアニメは、
「うん、そうだね、私もそう思っているのだよ」
「そうなんですよ、課長、我が社には、あのキャラクターが必要だと思いませんか?」
「ふふふ、それなら心配する必要は無い。もう昨日の会議が終わって、すぐ上には伝えておいたんだ!お手柄だよ!相出君!」
「ありがとうございます課長。この相出、これからも頑張ります」
「キミとは気が合うなあ、この調子で頼むよ」
そんなこんなで、数か月後。我が社の自動車が大人気になり、大量の受注生産が始まった。
その
情報は瞬く間に拡散されて注文が殺到したのだ!
俺のアイデアが我が社に長く続く赤字路線から脱却させたのだ!
やはり、俺は天才だったと社内から注目されている!
俺の名前は、
おそらく、来年の春には課長に昇進しているだろう。
それは、なぜか!何と今は課長と一緒に推し活をしているからだ!
「相出君、これからも、アニメを見ることを最優先する事にしようとするか!」
「そうですね、課長。尊い作品は素晴らしいですね!」
「うん、そうだねえ。でも、ここでは課長と呼ばないでくれ!我々は、てぇてぇの仲なのだから」
「はは・・・そうでしたね」
その後、我が社の株価は最高値を付け業績は右肩上りだ!
「これからも、このアイデア
俺は、将来社長になる事を目標にすると心に決めた!
アイデアマンが会社を救う 猫ララ @nekorara
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