第26話 リホ視点 ???視点

 #柴田リホ視点


 「…えっ?」


 私は、隼人くんが告白する場面に直面した。私に、じゃなくてシロちゃんに。それを見てると、何故か視界がぼやけてきた。これ、夢なのかな?


 …違う。私、泣いてるんだ。


 諦めた、はずだった。こうなることも、覚悟してたつもりだった。それでも、どこかで彼の優しさに期待してたのかな?


 …今の私は、すごく傷ついてる。何もしなかったのに、結果にばかり不満をもらす、なんて。前世から何一つ成長してない。諦めることに、慣れてるはずだったのに。


 …全部、彼のせいだ。私なんかに優しくしてくれて、お互いの秘密を一番分かってるからっていい気になって。いつか、いつかって、期待した。


 …なのに全部、なくなっちゃった。目標も、希望も、生きる意味も。シロナとして持っていたはずの夢さえも…。


 こんな風に思うくらいなら、心なんてない方がよかった。人形みたいに、ロボットみたいに、誰かに動かしてもらいたかった。


 「…何で、もっと早く勇気出せなかったんだろう?…何で、シロちゃんと同じ人を好きになっちゃったんだろう?」


 …全部、自分のせいだって、分かってる。チャンスはいくらでもあったはずなのに、シロちゃんのため、隼人くんのため、って逃し続けてた。


 ならどうすればよかったのか考えても、何も分からない。私がどうしたいのかも、分からない。ただ時間だけが過ぎて、辺りはすっかり暗くなっていた。


 見上げた夜空に浮かぶ月は、私を照らしてくれてるのか、私を見下しているのか。…もう、何も考えたくない。


 #???視点


 「…な、何だよ今の」


 俺は今見た衝撃的な光景を一生忘れられないだろう。夕方特有の焼けるような空、人のいない体育館裏、高校生の男女が二人。


 俺だってここを通ったのはたまたまだ。部活の練習の合間、自販機まで行こうとショートカットを使うつもりだった。…それだけの予定だったのに。


 そのうちの女子の方を俺はよく知っている。…だから、分かる。照れて、でも嬉しそうにしてるのを。


 そのうちの男子の方を俺はよく知っている。…だから、分からない。何でそんな表情を引き出せているのかを。


 俺こそが彼女からそんな表情を向けられるべきはずなのに、どうしてそれがあいつなのか。しつこいくらい絡んできたはずなのに、どうして俺の大切な人を奪っていくのか。


 「…そっか。脅されているんだね。可哀想に」


 言葉に出した瞬間だった。今まで感じていた違和感が全て泡のように消え去っていった。彼女の様子がおかしかったのはあいつのせいだったんだ。


 俺の誘いを断ったり、俺を避けるような様子を見せたり。俺もその前に彼女にはカッコ悪いところを見せちゃったと反省してたから気にしなかったけど、俺を巻き込まないためにあえて冷たくしてたのか。


 「…大丈夫だよ。今度こそ、俺が守ってあげるからね」


 たとえどんなことをしようとも、俺は彼女をあいつの魔の手から救い出す。そう、それが俺のやるべきことだったんだ。やっぱりあいつの存在を許しちゃいけない。…俺はもう逃げない。シロを、大切な幼馴染みを取り戻すために戦う。


 闇を携えたその瞳が、ジッと安久山の後ろ姿を見つめていた。

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