大好きだった君へ
夏宵 澪
他の誰でもないあなたへ
あの日の波はきれいでしたね。
でも今は、あの星のほうがきれいです。
あなたがいなくなってから、
私の世界は、真っ暗になってしまった。
何もしたくなくて、
音を奏でる気持ちも、どこかへ消えてしまっていた。
もう、音なんていらないって、本気で思ってた。
本当はね、あなたのあとを追いたかったんだ。
でも、それはできなかった。
「なんで私だけが生きてるんだろう」って、
ずっと考えていた。
そんなとき、あなたの日記が届いたの。
懐かしい文字。少し癖のある書き方。
ページをめくるたびに、
あなたの声が聞こえるようで、胸がぎゅっと締めつけられた。
……やっぱり、あなたは何でもお見通しだったんだね。
私があなたの死を受け止められるようになったら、
日記を渡してって、親に言ってたんでしょう?
ずるいなぁ。
そんな優しさ、ずるすぎるよ。
でもね、ありがとう。
あなたの言葉が、私を“ここ”に戻してくれた。
暗闇の中に、少しずつ光が戻ってきたの。
「一生大好きだから、生きていて」
その一行を読んだとき、
不思議と息がしやすくなった気がした。
あれから少しずつ、前を向けるようになったよ。
たくさん嘘をついて、
周りの人にひどいこともしてしまった。
罪を重ねて、何が楽しいのかも分からなくなって、
笑うことさえできなくなってた。
今だって、あなたの死を完全に受け止められたわけじゃない。
でもね――
今の私は、ちゃんと笑えるようになった。
たまに泣いちゃうけど、それでも笑える。
そしてね、
新しい恋も見つけたんだ。
まだよく分からないけど、
きっと叶わないかもしれないけど、
嘘をつかずに、素の自分でいられそうな人。
きっと、あなたがいたから、
私はこの人に出会えたんだと思う。
だから、遅くなっちゃったけど――
あなたの最後の願い、ちゃんと叶えるね。
あなたがくれた音を奏でながら、
笑って、生きていくよ。
ずっと、ずっと、愛してる。
それは、これからも変わらない。
だから――私が天寿をまっとうするまで、
ちゃんと待っててね。
新しい恋を見つけたからって、
嫉妬しないでよ?(笑)
あなたの分まで、ちゃんと幸せになる。
ちゃんと、生きる。
そしていつか、また会える日が来たら、
そのときは一緒に笑おうね。
あなたの好きだった曲を、
もう一度、あなたの隣で弾きたい。
それまで、見守ってて。
星のどこかで、笑っててね。
愛と感謝をこめて。
大好きだった君へ 夏宵 澪 @luminous_light
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