午前七時七分の予言
いずな
午前七時七分
目覚まし時計が鳴る五分前の静寂こそが、田中にとって一日の始まりだった。彼はこの五分間で呼吸を整え、完璧な一日を組み立てる。七時にコーヒーを淹れ、七時半にニュースをチェックし、その後飼っている金魚に餌をあげ、八時から仕事を始める。彼の職業は在宅デザイナーだった。自由に時間を使えるが彼は真面目でどうも完璧主義な一面があるようだ。それが彼の日常であり、完璧に守られてきたルールだった。異変が始まったのは三週間前、その定刻だった。
午前七時七分。
チャイムの音が鳴った。こんな朝早い時間に来るのは誰だと思った。何も頼んではいないし、友達など尚更ありえない。それともなにかの営業かもしれない。外には誰もいなかった。イタズラか? 彼はそう考えた。 田中が住んでいるマンションは少し古めで人通りも少ない。もうここに5年は住んでいて大体どんな人が住んでいるかも知っているし、そんなことする人に検討もつかない。嫌がらせなども視野に入れたがそんなとされる覚えは無い。まぁいいやと思い深く考えずその日はドアを閉めた。玄関に戻るとスマホから通知が届いていた。確認すると通販サイトからだ。今日届く予定だった新作のゲームが明日に届くらしい。楽しみにしてたのもあって少し残念だ。この日からだった、午前七時七分にチャイムがなるようになったのは...
次の日もいつも通りの時間に起きた。七時にコーヒーを入れ終わり少しくつろいでいる。すると、チャイムが鳴った時計を見ると七時七分。昨日と同じ時間だ。何かと思い、また玄関に行き扉を開ける。するとそこには誰もいない。昨日と同じだ。やはりイタズラか?と思いながら自分の朝の時間を邪魔されたことに少し腹が立つ。扉を閉め、再びコーヒーを飲む。夕方、今日の仕事は早く終わりそうだと思い少し息抜きをすることにした。リビングに行きコーヒーでも飲もう。そう思って、仕事部屋を出ようとした時だった。いつも手入れを欠かさずしていた観葉植物が少し枯れていた。なんでいきなり、昨日までは枯れてなかったのに、なぜ。やはり毎日育てていただけあって不思議でしょうがなかった。
次の日もまた同じ時間、七時七分にチャイムが鳴った。またか、そう思い今度はすぐに玄関に行きドアを開けた。だが、そこには誰もいない。最近続いているので、イタズラなら少し懲らしめてやろう。そう思っていたが、玄関を開けて周りを見ても人の姿も見えない。少し不気味に感じた。お隣さんにも聞いてみた。六十歳のおじいちゃんだ。ここに来てから仲良くしてくれる人で1人で暮らしいる。犯人とは思えないし、このマンションの中では一番信頼している。チャイムを押されてないか、誰か見なかったかと、話を優しく聞いてくれだが何も知らなかった。再びコーヒを味わった。仕事中もチャイムのことを考えてしまい中々作業に取り掛かれなくなってしまった。コーヒーでも飲んでリフレッシュしよう。そう思いコーヒーを持ってきた。テーブルに置こうとした時だった。つまづいた。気づいた時には遅かったカップは割れていなかったが、コーヒをパソコンにこぼしてしまった。慌てて綺麗にしたが、パソコンはつかなかった。
次の日、コーヒーをこぼしたため、仕事は中断せざるを得ず、修理に出すことにした。今日は仕事が出来ないので1日ゆっくりと過ごすことにした。また朝のコーヒーを入れる。七時七分この時間に、ここ最近チャイムが鳴っていることに気づいた。今日もその時がきた。が、チャイムが鳴ることはなかった。たまたまなのか、それとも今日は別の時間なのかそう思いながら一日を過ごしたが今日はチャイムが鳴ることはなかった。
チャイムが鳴ってから三週間がたった今、気づいたことがある。チャイムがなる日は必ず不幸なことが起こるということ。もう一つは絶対に七時七分に鳴るということ。何も無い日は鳴らない。あの後も色々なことがあった。観葉植物は完璧に枯れてしまったし、仕事の締切日を間違えていたり、大事にしていたフィギュアのパーツが無くなったり、他にもどんな些細なことでも不幸な事だとチャイムは鳴る。隣のおじいちゃんには、あれからもチャイムの話をしたが、進展はなかった。そして今日の朝もチャイムは鳴った。今日はどんな不幸が起きるのだろう。そう思っていた時だったいつも通りコーヒを飲み終わり、金魚に餌をあげようとしていた。水槽に行くと金魚が、死んでいた。嘘だろと思い見つめるが、ピクリとも動かない。ここのマンションに来てからほぼ同時に飼い始めた金魚だった。独り身の自分に少しでもの癒しをと思い購入した。ちゃんとお世話したと思ってたけれど、何かが足りなかったのか、寿命が来たのかわからなかった。でもずっと一緒に暮らしていた金魚だ。居なくなるのはとても寂しい。ちゃんと埋葬することにした。埋めている時、今までのことを思い出し、涙を流した。いつぶりだろう、泣いたのは……。
次の日いつも通り起きてコーヒーを飲む。この後、前までならペットの金魚がいたので、餌をあげるがもうそれはルーティーンから消えた。人間いつもやっていたことをいきなりやらないとなると変な感じだ。寂しいな。そう思っていると今日もチャイムが鳴った。今日もか、昨日のことがあったので少し怖かった。そう思いながらも、玄関に向かい扉を開ける。やはり誰もいない。扉を閉めて再びコーヒーを飲み始める。今日の不幸が訪れたのは、仕事が一段落して休憩しようと思った昼時だった。外が騒がしいことに気づいた。なんだと思い、玄関の扉を開けると外には、救急車と救急隊の人達がいた。何事かと思っていると、運ばれていたのは、隣のおじいちゃんだった。その後の仕事には、手がつかなかった。おじいちゃんはそのまま帰らぬ人となった。特に病気もなく、健康だった、原因は今のところわからないらしい。昨日の金魚の件といい、今日のこと、やはりチャイムが関係している。鳴ると不幸が訪れる。次は自分にも恐ろしいことが訪れるのではないかと思うと寝られなかった。
次の日ほとんど眠れなかったが、いつもの時間に起きた。チャイムが今日なるかもしれないと思うと怖くてしょうがなかった。次は自分かもしれない。そんなことを思いながら布団から出ることも出来なかった。恐怖とは裏腹にどんどん七時七分に時間は進む。震えが止まらなくなる。今までのことはまぐれだと自分に言い聞かせる。ついに七時七分その時間はやってきた。チャイムが鳴る。息が上がる。 頭の中が真っ白になる。その後すぐのことだった...玄関のドアが開いた音がしたのは
...(鍵が開き、ドアがゆっくりと開く音の後)と玄関のドアが内側へ開く、木と木の擦れるような嫌な音が、静寂の中で響き渡った。恐怖で身動きが取れなかった。しかし、その開いたドアの隙間から、何者かが入ってくる様子はない。代わりに、カチリ、と小さな音がした。目覚まし時計が鳴る五分前の静寂だ。いつもの五分間のルーティンを開始するため、ベッドから静かに立ち上がった。
午前七時七分。
玄関のチャイムが、ピンポーン、と一度だけ鳴った。
午前七時七分の予言 いずな @IZUNA_000
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