第11話
岡田は笑いをこらえるようにして震えていた。スマホを見つめているのだ。何やら面白いものが見つかったらしい。
一方女たちは驚嘆した声をあげていた。
「え、ナニコレ...誰が撮ったの?」
ヒステリックな声をあげながら、一人の女が呟いた。
「知らない...私も急に届いたから」
女たちは、AirDropで写真が送られてきたらしい。
「でも、私たちしか部屋にいないじゃない」
「これを共有してどうする気なのよ!!」
女の一人が、カバンから拳銃を取り出した。
「何でそれを持ってるの?本物?」
「パトロンになる予定だった男が私にくれたのよ。ここでは何があるか分からないから護身用に持っておきなさいって」
「じゃあ、なんで、大人しく糞まみれになったのよ」
「うるさい!!あの時はお金が必要だったのよ!!」
「臭いにおいがうつるからあっちいけ!!」
4人とも、言葉にならない罵声を浴びせ合った。そこに合理性や辻褄を合わせようという気はさらさらない。
「安い女よりはましよ!!」
二人目の女も銃を取り出し、気づけば全員が銃を持っていた。
隣の部屋の罵声を聞いた、小田切は、窓を伝って、隣の部屋に行った。
すると、窓からは女たちが銃を向け合っている光景を見た。
「やめなさい!!銃刀法違反だぞ!!」
窓を叩いて、小田切は訴えるも、馬耳東風で、女たちは互いに互いを罵り合いながら、今にも引き金を引こうとしかねない雰囲気である。
女は泣きながら、大声で訴えた。
「私は、お金も欲しいけど、本当はみんなに褒めてもらいたいだけなの。だからそんな目で見ないでよ」
「だまれえ!!ブス野郎。お前何て整形しても一生遊びの女どまり何だよ!!おとといきやがれ」
「簡単におっさんに股開く女が、愛されたいとか言ってんじゃねえ」
すると、それを言われたと勘違いをしたAV女優の女が、ラウンジ嬢を撃った。
「ぎゃあああああ!!!」
「やめなさい」
小田切は、金槌でガラスを割ろうとしたが、ひびも入らなかった。
撃たれたラウンジ嬢は、脇腹を抑えていた。目の焦点があっておらず、叫び声をあげた後、痙攣し、丘にあげられた魚のようになっていた。
「何してんだお前!!」
「こいつが、私のことを罵るから」
「どう見ても、このパパ活女の事じゃない!!」
AV女優は、茫然としているすきに、キャバ嬢が、AV女優を撃った。
「お前は私の事またも開けない女だって思ってんだろ!!お前の方がよっぽど汚いよ!!アイドル扱いされたと思って、ちやほやされたと思ってるんだろ」
キャバ嬢は、泡唾を飛ばしながら、目を半開きにし、思いのたけをぶつけた。
アジアでは、AV女優は、好待遇で、海外の案件に参加できるらしい。相手の男もAV女優と言うだけで、興奮すれば、その分だけご祝儀もあるということだ。
キャバ嬢は、そのことに我慢ならなかったのだろう。
すると、ドアから、ホテルのスタッフと小畑が入ってきた。
「小畑さん」
小田切は再び、窓を伝い、ドアに向かった。
何で窓から入ろうとしたのかといささか後悔したが、緊急を要するので、その判断をしたのだろうと刹那的に考えた。
「皆さん落ち着いてください」
ホテルのスタッフは言うが、それを言ったくらいで落ち着くなら初めからそんなことにはなっていないのだ。
「何で拳銃を持ち込んでいるんだ」
大方、パトロンが入国審査官を買収したのだろうと、小畑は思った。
すると、現地に警察官が、ホテルに到着し、女たちを制圧した。
「誰だ。警察呼んだのは!!ドアの外には数人の見物人がおり、それに対して発砲しようとしていたので、小畑も警察官として女たちの拘束に助力した。あとは、現地の警察官に任せるだけだ。
しかし、小畑は食い下がらなかった。
「私も警察です」
「そうですか。お疲れさまでした」
現地の警察官たちは、小畑を相手にしなかった。
野次馬たちが集まっていたが、それを蹴散らすことに、随分と時間がかかった。
あのまま、身柄を引き渡していいものだろうか、一抹の不安が、小畑を襲った。しかし、その思いは、小田切も一緒であった。
だが、ことは着々と進められ、小田切小畑は虫の知らせを受け取ることになる。
4人の女を乗せたパトカーは警察署にはいかず、どこかの港に到着した。
その後ろには例の黒い車がついてきていた。
「おい、降りろ」
女たちは気が動転しながらも、無理やり、道に放り出せれることになった。
「この船に乗れ」
警察官たちは無表情で、告げた。
岡田たちも車を降り、船に乗った。
「さあ、一緒に、魚釣りでもしましょうか」
漁船である。
「乗れ」
低い声でそれを告げたのは春陽だった。
和久井も女たちに乗るように促す。
「その銃...」
すると、一台の車がそれを追うようにして、走ってきた。
小畑小田切であった
「待て。和久井秀忠。銃刀法違反の罪で現行犯逮捕する」
「船に乗らないと、あの刑事さんに逮捕されちゃうよ」
岡田は銃を構えた。
「邪魔をしないでもらえるか、刑事さん」
「あんた....」
岡田と小田切は、睨み合っている。
熱帯の夜の風を、まるで冷気に帰るがごとく、そこには緊張が走っていた。空気が膨張しパンパンに膨れ上がっていた。
いつそれが爆発し、大気中に分散し、戦いの火ぶたが切られるかが分からなかった。お互いの腹を探り合っているのだ。
「何か勘違いをしているようだが」
岡田の一言でこの膨張した空間に、ゆるみが生じそうになったが、それは危険であった。ゆるみの正体は油断だからだ。この男は何とかして、小畑の注意を逸らそうとしているのだ。
けがれなき町 パンチ☆太郎 @panchitaro
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