第4話
「車に乗りたまえ、春陽くん」
父親を撃った春陽は、岡田に後部座席を案内された。
黒い車であった。
春陽は、制服姿のまま車に乗ることになった。
「どこに行くんですか?」
「うん。梅田と言うところさ。知ってるかい」
有名な街なので、知っていたが行ったことはなかった。
「あそこは人が多くてね。それだけ、ゴミも多く集まっているのさ」
「ごみですか..」
「うん。社会のゴミだ」
車を数分ほど走ると、ビル街にやってきた。大きな街だ。
歩道が少ないように感じる。
「このビルのほとんどは、地下から行けるようになっている。ねずみみたいだな。まるで」
岡田はそういうが、春陽にはその意味を感じ取れないでいた。
「このお姉さんを殺してきてくれ」
春陽はスマホの画面を見せられた。
「書店のイベント....」
「ああ。それが開催される前に殺せ。うちの部下が、裏口を開けてくれているから、そこから入って殺すだけ。マネージャーを殺すのはだめだ。弾は6発。いいね」
春陽は拳銃を渡される。
「な、何でですか?」
「AV女優だからだよ。しかも、いっちょ前にカレンダーを売ろうとしている。家族がこのことを知ったらどう思うかな」
春陽の眼が光った。
銃を受け取り、裏口に入る。
かび臭い廊下から、階段を上がり、書店がある4階へと向かう。
「本日はよろしくお願いします」
AV女優、葵らんが、イベント関係者に挨拶をした。身長164cm。たぬき顔が特徴で、バスケ好きであることでも知られている。
簡素な楽屋みたいなものが設置されており、葵はそこに向かった。すると、階段から、制服を着た少年が見えた。不審に思いながらも、葵は楽屋に入ろうとすると、少年が、自分の元に走ってきた。
あれが、葵らんか...
春陽はそう思った。
銃を内ポケットにしまっている。
何の憎しみもない人間を
どうして殺さなければならないのか
何で俺はあの男の言うとおりにしているのだろう
俺を見て驚いている。
無理もないか
「あ、あなた誰なの?」
一瞬戸惑いが起きた。
このまま、銃を取り出して撃ってもいいのだろうか。
しかし、俺は父と母を殺してしまったのだ。
今更....
「あ、ああ、、」
俺は内ポケットから銃を出した。
心臓がパクバク言っている。
体が震えているのか。
心臓を起点にして、体の全体が震えているのだ。
心臓はなってくれていいが、体の震えは止まってくれ。
そう叫んだところで止まらない。
しかし、考えてはならないのだ。
俺は、銃を向けて、葵らんを撃った。
葵らんは、おどいた顔をしたまま、胸に穴をあけてそこから血が流れていた。
俺はパニックになった。
助けに行こうと思ったのだ。
俺が撃ったのにもかかわらず。
すると、銃声を聞きつけた、マネージャーらしき女と書店のスタッフが、廊下に出てきた。
「だ、誰やお前は!!」
俺は走って逃げた。
後ろから追いかけてきたが、俺は何とか巻いた。
そして、車に乗り込んだ。
「すばらしい、逃げ足だな。ちゃんと仕留めたようだ」
岡田はスマホを見ながら言った。
書店があるビルから、数十メートルある所に、それが止めてあった。
岡田は春陽に報酬を渡した。
「あの、毎回現金なんですか?」
春陽は岡田に聞いた。
「そうだね」
「どうしてですか?」
「重みを感じてほしいからだよ」
「重み?」
「うん。仕事をしてもらう人には、デジタルな数字じゃなくて重みを感じてほしいんだ」
岡田は、にちゃあと笑った。
自分の恋人を殺された、小畑は、湯水のように金を使って、犯人である大塚を殺そうとした。
小畑は、IT企業の社長で、美女を我が物にしているところが、たびたび目撃されているところから、いけ好かない野郎と世間から言われているが、小畑は気にしなかった。
会社を私物化しているようにしか見えないこの愚行を誰も止めることはできなかった。
「おい、大塚に関する情報見つかったか?」
調べさせている部下に電話を掛けた。部下からすれば、迷惑この上ない話だ。
「実は、大塚と言う男は、存在しないようでして...」
「何?」
つい先日、大塚は、浅野に、裁判で、1000万円の返還請求を求めている。その時の住所や氏名などが、全て偽物だったのだ。
「やつの、住まいや実家は?」
「実家には、老夫婦がおりましたが、息子とは数年会っていないとのことで、住まいのアパートは、もぬけの殻でした」
「事件から、数日もたっていないぞ?夜逃げか何かか?でもやつは、財産をすべて、麗美に...そういうことか...」
「どうしました社長」
「あいつは、いつでも逃げれるように、全部金に換えてから、麗美に近づいたのか...」
でも、計画的犯行には思えない。やつは、麗美をめった刺しにしたのだ。ただ殺すことを考えれば、事故に見せかけて殺すこともできたはずだが...
「金に糸目はつけんから、詳しく調べておいてくれ」
そう言って、一方的に電話を切った。
男は多幸感に包まれていた。
独特の香りに包まれている。
男は、湯船につかっていた。しかし、服を着ている。完全に着ているのではなく、ランニングシャツとボクサーパンツだ。
そして、湯船にはお湯ではなく、紙が入っている。
それを傷つけまいとしているのだ。
札束の風呂であった。
男が数時間前に勧められたものだ。
数時間、男にとっては数時間前。実際に流れている時間は、数時間と言うには長い時間だった。
「あの、こんな大金どうすればいいんですか?」
「普通に持って帰ったらいいんじゃない?」
スイートホテルの一室に臭い格好で、和久井は訪れた。あの色、あの景色、あの匂い。忘れもしない。
岡田は無責任にそう言ったのだ。
「まあ、お金持ってなかった人が持っても、使い方分かんないか...じゃあ、お金の風呂なんてどう?」
「え」
「ほら、漫画とかでよくあるでしょ。お金の風呂。あれやってみなよ」
そう言って出ていった。その数秒後、銃声が聞こえたのは、読者が知っての通りだ。
実際にやってみると、案外いいもんだが、これをいつまでやっているといいのだろうか...
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