抜いちゃった(前編)

 学校帰りのこと。莉奈が徐にこんなことを言ってきた。


「そうだ。今日さ、大樹の家に行ってもいい~?」


「いいけど? 珍しいな」


「じつは、ママの手作りお菓子があるんだよね~。一緒に食べよう!」


「なるほどな!」


 まあ、万が一夜になったら家同士近いし、送っていけばいいなと思い、俺は快諾した。




        ◇




「チョコバナナってお祭りの時しか食べないもんだけど、美味しかったな」


 それはそれとして、莉奈がチョコバナナ食べてるだけなのに、卑猥な姿に見えるのなぜだろうか。


「チョコバナナ美味しかったね~」


「お、オッフ……」


 マズい、アレが自然と臨戦体制に……


 このままでは莉奈を襲ってしまう。前彼女は、『初めては甘々な状態でしたい』と言っていた。ここで襲えば、その不文律を俺が破ることになってしまう。さらに、初めてが襲われた経験だと、永遠に彼女に刻み込んでしまうことにも。


 すぐに彼女を逃して、一人でしなければ……


「あっ、莉奈! もう外さ、結構暗くなってきたからさ。家まで送るよ」


 自分の顔は見えないから憶測でしか物を言えないが、今の俺の顔、めちゃくちゃ目ぇガンギマリ状態だろう。


 そんな俺をよそに、彼女は急に顔を赤らめて、モジモジしはじめた。


 トイレだろうか? トイレは俺が一番使いたい状態なのだが。


「ね、ねぇ、大樹~。今日は一緒に居たいって言ったら怒る?」


「は? それはどういう……? ま、まあ、別に今日は父さんと柚月は大学関連で居ないから大丈夫だけど……?」


「知ってたよ」


 彼女がにこやかに、さらには若干の圧をかけながらそう答える。


 そして莉奈は俺の両肩に手を置いて、こう囁いてきた。


「ママからね、二人が家を出てるって聞いていたんだ、だから今日きたんだよ~?」


「り、莉奈……?」


「大樹は、女の子にみっともない姿を晒すような男じゃないもんね」


 彼女はほほえみながらも、同時にしたたかさを感じる声色で発した。


 ていうかこの流れってまさか、そうだ俺は鈍感系主人公ではない。まず間違いなく、そういうことだろう。同人誌で見た流れだ。


 十代の男女が二人きりですることなんて一つしか思い浮かばない。トランプ、違う、それは絶対に違う。判断を間違えるな。


 落ち着け俺。冷静に考えると、多分このままいけるとこまでイッたら、甘々な結果になって、彼女にとっても俺にとってもハッピーな結果に……


 いや、何かを忘れている。そうだ、子作り目的なら要らないかもだが、今回の場合はそうじゃない。だから、アレがいる。


 だけど、俺。アレ持ってない!


 男女がアレする時に装着するアレ、持ってないよ!?


 このままじゃ未成年パパ。三十代で子供が成人? 下手をすればその頃には孫? 四世代リレーに応募可能?


 冗談じゃねぇ。流石にそれはマズい。俺多分、責任取れないかも。


 それに、莉奈はいとこだから、もしデキてしまったら親族になぶり殺されてしまうだろう。


「男女がアレする時に装着するアレ、僕持ってるよ」


 持ってるのかよ!? ていうか思考読まれてる? 男女がアレする時に装着するアレって普通言わなくない? 一言一句違わず言ったぞ?


「思考は読んでないよ~」


 いやどっち? どっちかというと読んでない? この場面で嘘つく意味も無いけれど。


「じゃあ、僕。お風呂入ってくるから。……下着は赤だよ?」


 水色がよかった。ほならやっぱり思考読まれてないか。ドヤりながら風呂入って行ったし。


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