第27話

 ヴァルさんと会って5日目。

「飽きた」

 初日とあまり変わらない生活。

 ヴァルさんに抱っこされて移動。

「下ろして、自分で歩く」

 って何回目かわからない主張をする。

「いや、危険だから抱っこしてやる」

 どうやら、私の履いている靴とも言えないツルを編んだサンダルのような靴が森を歩くのに心もとないそうだ。見ていていつスライム踏んで足を負傷するかわからないと。

 精霊さんが教えてくれるからスライムを踏むことはないよと言いたいけど、言えない。エルフだってことは隠して生きていこうと思っているから。

 風の精霊の加護があるのはエルフだけって話だし。

 ヴァルさんはよほど私の頭を撫でるのが気に入ったのか、しょっちゅう撫で撫でされる。そのうち、ハゲるんじゃないかな、私……。もふられる側も大変だな……。

 ……待てよ?

「まさか、私を抱っこしてるのって、頭が撫でやすいからとかじゃないよね?」

 ……。目をそらすのはなぜですかね、ヴァルさんや……。

 そっちがその気なら。

 ワシャワシャワシャ。

「もふもふもふもふ」

 好きなだけヴァルさんの頭をモフってやる。

 抱っこされてるから眼の前に頭があるのだ!

「フワリ、待て、待て、さっきの飽きたはなんだ?話をしよう、な?抱っこされているのが飽きたっていうことか?だったら、おんぶしようか?」

 ……それで解決すると本当に思っているのか。

 はぁーと大きくため息をつく。

「そろそろご飯の時間でしょ……」

「ん?そうだな。よし。すぐに準備する」

 といって、ヴァルさんが空を見る。

「【焼肉っ】」

 呪文を放つと飛んでいた鳥に火の玉が命中。ぼとりと落ちてきた鳥に近づき、ヴァルさんが私を下ろしてくれる。

「……」

 贅沢だというのはわかっているんだけど、でもやっぱり言いたくて仕方がない。

「ヴァルさん、この呪文絶対おかしいよ!これは【焼き鳥】、呪文にするなら【焼き鳥】だと思う。だって、鳥しか焼かないじゃんっ!塩味の焼き鳥しかできないんだからや、呪文は【焼き鳥】じゃなくちゃおかしいと思う!」

 焼肉って聞くたびに、網の上でじゅうじゅう焼けるお肉が頭に浮かぶんだよ。醤油とにんにくとごま油を使って作ったタレが欲しくなるんだよ。

「ん?んー、まぁそうか?そうなのかな?どうでもよくないか?」

 と首をかしげながらヴァルさんが焼いた鳥をちぎって塩を降って渡してくれる。

「ありがとう……でも……飽きた。違うものが食べたい……贅沢だって分かってるんだけど……分かってるんだけど……」

 焼肉焼肉とずっと聞かされて、前世の記憶が戻ったら豊かな食生活が恋しくなった。そう、これは贅沢というよりも、恋しい。ホームシックみたいなものなんだろう。ホームシックならぬ、食事シック?

 ポロリと情けないことに涙が出た。

「ゴメンなフワリ。パンも干し肉も必要ないと思って何も持ち歩いて」

「あっ!」

 ヴァルさんの後ろに、白っぽい小さい花が集合して丸く咲いている植物が見えた。

 駆け寄ってちぎる。ひょろひょろと細長く伸びた茎。ひょろひょろと伸びた葉。

 一見根本は小口ネギのように白くなっている。葉はニラのようでもある。

 じっくり観察する。根本は縦筋があり、葉の断面は潰したストローのように空洞がある。そして、何と言っても匂いがネギにも似た香りがある。

「野蒜だ!」

「のびる?うん、確かによく縦に伸びた葉っぱだな?」

 ヴァルさんがダジャレを言っている。

「掘るっヴァルさんお水、石もほしい」

 掘らずとも、引っこ抜くことができた。ただし、勢い余って尻餅をつく。

「なんだ?この草がほしいのか?」

「草じゃないっ」

「薬草でもないだろう?」

 民間療法では肩こりに効くとか耳にしたことはある。この世界での扱いは知らないけども。

「これくらいあればいいか?」

 私が3つ4つ引っこ抜く間に、ヴァルさんは2〜30本引っこ抜いていた。

「うん、ありがとう」

 

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