第13話

 前世記憶のレンコン料理が次々と浮かんでは、消えていく。

 レンコンのきんぴら。

 調味料なしではただのレンコン。

 レンコンのはさみ揚げ。

 何を挟むんだ、レンコンのレンコンはさみか?

 レンコンチップス。

 油がないよ。

 ……てな具合で、作る候補から消えていく。

 池の水でレンコンをごしごしと新いながら、んーと考える。

「……もし、醤油があれば……」

 と思っても、1000年生きている間の200年あたりまでは醤油が入手できるとは思えない。平安時代には醤油っぽいけど違う物があったけど、醤油の登場は室町時代らしい。

 ……って、どう考えても、作れるものって……。

「丸焼きしかなくない?」

 やきいもみたいにまるっと焼いて、かじって食べるしか……。

「包丁がいる!」

 打製石器と磨製石器……。作るしかない!

 土器の次は石器。明日頑張ってみよう。

 洗い終わったレンコンを平らな石の上に置いてから、かまどの準備。

 森が少し開けた場所にある池の周りは石が結構ごろごろしていて助かる。

「もしかして昔の人が石で囲って作った人工池?」

 そんなわけないか。

 石をつんで簡易かまどを作る。

「あ……これ、粘土で覆えば……あれ?それってちゃんとしたかまどができちゃうってこと?」

 先がとがった尖底土器は地面にぶっ挿して使っていたらしいけど、……。

「かまどを作れば、縄文人より先を行く文明人に突入!」

 わずか村を出て数日で、我、縄文人を超える!

 って、土器も石器もできてないから、縄文人以下か。

 先は長いけど、すべてが楽しみ。

 石を崩れないように積む。ドーム型ではなくて、鉄板代わりの石を載せられるようコの字型って言えばいい?

 鉄板代わりになる平べったい石は……。

 キョロキョロと探すと、いい感じの石を発見。近づいて肩を落とす。

「あー、ざらざらの石だ。つるつるの石じゃないと焼いたもの引っ付いちゃうよね」

 って、待てよ?

「レンコンを丸焼きにするのなら、鉄板代わりの石はいらなくないか?」

 火にそのまま投入。アルミホイルなんてものはないから、焼けたら焦げたところをむいて食べる感じ?

 それじゃ、かまどの蓋代わりにするだけなら表面がざらざらでもいっか。

「ざらざら?」

 石の表面を手で撫でる。

 ざらざらのでこぼこのぼつぼつ。

「もしかして、あれが作れるのでは?」

 急いで洗ったレンコンを持ってくる。

 時間がかかろうとかまわない。別に次の予定のが詰まっているわけではない。

 やりたいことはたくさんあるけど、自分のペースで何もかもしていいんだ。

「もしかして、これがソロキャンプの醍醐味?」

 そっか、私、ソロキャンプ生活してるのか。

 そう考えると贅沢だなぁ。毎日がソロキャンプ。自然の恵み使い放題。

「あ、ごめん、精霊さんと一緒だった。ソロじゃないね?」

 ふわりと風が髪を揺らす。

 よし、頑張って作るぞ。

 材料は、レンコンと片栗粉。

「まずは、このざらざらの石をよく洗います」

 力が入れやすいように、地面に置いて、レンコンを擦り付けます。

 ごーりごり。

 ごーりごり。

「おお、すりおろせた!」

 ところどころすりおろしきれなくて塊になってるけど、きっとアクセントになってくれるはず。

「じゃーん、そこに登場するのが、片栗粉!」

 目分量で大匙2杯分ほど入れて混ぜる。

 すりおろしたレンコンがまとまる程度の量。それから、小さなハンバーグのような形にして、あとは焼くだけ。

 すでに火を起こしてあるかまどの上に、石ごと置く。

 まだちょっと時間がかかるよね。この間に……。

 追加でレンコン掘ろう!

 手彫りだから大変だったんだよ。

 森の中に行き、適当な枝を拾ってくる。

 スコップ代わりだ。

 本当は鍬見たいなのがあった方がいいんだけど……。

 鍋、包丁、鍬……ドワーフに会いたい理由が増えてく!

 それはそうとして。

「うりゃーっ」

 木を池の中の泥に突っ込んで、ぐっと押し上げる。

 売り物にするわけじゃない。レンコンが多少傷ついたとしても仕方がない。

 非力な6歳児がろくな道具もなくレンコンを効率よく収穫するためには仕方がない。

 はぁ、はぁ、はぁ。

「と、採ったどー……はぁ、はぁ」

 細身のレンコン何本か収穫。これで、2,3日の食料は確保。

 ついでにハスの実も収穫する。

 池から上がって、右手に木の棒、左手にレンコンを握ったまま倒れこんだ。

 





 

 

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