現実主義マッチョ異世界で無双してしまう
茶電子素
第1話 異世界ファンタジー?そんなもの知らん
俺の名は剛力無敵。年齢は16歳、高2。
気がついたら知らない野原に立っていた。
ふむ?いきなり知らない場所にいるとか、おそらく夢だろうな。
背筋を伸ばし、胸を張り、あたりを見渡せば近くの森からローブを着た連中が出てきた。
杖を振りかざし、口々に呪文を唱える。
「火よ、燃え盛れ!」
「氷よ、凍てつけ!」
どうやら魔法使い?
なんともリアリティの無い夢で、ちょっと笑える。
だが、自分の夢だし少しくらい付き合ってやろうかと思ったが、
「魔法なんて存在しないぞ!」
いくら夢でもあまりに荒唐無稽なので声に出して指摘してしまった。
俺はこう見えて頭のいいリアリストなのだ。
この世にあるのは筋肉と根性、それだけだ。
だから彼らの放った魔法の火の玉は俺の胸板に触れた瞬間、煙のように消えた。
氷の槍も、俺の二の腕に当たった途端、ただの水滴になった。
「な、なぜ効かぬ!?」
「我らの想いの力が……!」
彼らは口を開けて驚いている。だが俺にとっては当然のことだ。
想い?念じれば現象が起きる?そんな甘えた考えは筋トレの世界では通用しない。
スクワットは一回一回しゃがんで立ち上がらなければならないのだ。
「お前たち、努力が足りんのではないか?想いを語るのはその後だろう」
俺はそう言い放ち、近くの魔法使いを片手で持ち上げた。軽い。ダンベルより軽い。
彼は必死に呪文を唱えていたが、俺の耳には届かない。
なぜなら基本的に俺は人の話を聞かない。自分の考えに自信を持っているからだ。
そして聞かないものは存在しないのと同じだ。
「ぐえっ……!」
「やめろ、彼を離せ!」
「雷よ敵を貫け!」
別の魔法使いが雷を落とそうとしている?
だが俺は空を見上げて笑った。
この雲一つない青空のもと、雷など発生するわけがないではないか。
「な、なぜ発動しない!?」
俺は、持ち上げた魔法使いをそっと地面に置いた。
優しさも筋肉の一部だからである。
「お前たち魔法なんて、あるわけがないだろう。そんなありえないものに頼るより、まずは腕立て百回から始めろ。話はそれからだ」
彼らは顔を見合わせ、絶望したように膝をついた。
どうやら、この夢では魔法が戦いの基本らしい。
だが俺は魔法など存在しないと思っているし、
そういう存在しないものに頼るから、お前らは弱いのだ。
「おい、そこの大男!」
声をかけてきたのは、鎧をまとった騎士だった。
彼は剣を抜き、構えを取る。
だがその剣のサイズがどう見ても大きすぎる。
あんなもの振り回せる人間がいるわけがない。俺にも絶対無理だ。
「おい、お前。どうみても持つだけでいっぱいいっぱいだろう。よく見たら鎧も分厚すぎないか?立ってるだけできついだろう」
「ぐ、ぐぉ……」
騎士は相当頑張って立っていたのだろうが、
俺が声をかけた瞬間に崩れ落ちるように蹲ってしまった。
「し、身体強化が解除されてしまった……動けぬ」
「あたりまえだ。逆によく今まで動けてたと感心するほどだ」
俺は短く告げると、拳を振るった。
……動けぬ相手とは言え、俺に刃を向けたケジメはつけてもらわんとな。
彼は吹き飛び、地面を転がった。
周囲の魔法使いたちは悲鳴を上げて逃げ出す。
気づけば、野原には俺一人が立っていた。静寂。風の音。俺の呼吸音。
「ふむ……なかなか目が覚めんようだ。風邪でもひいて寝込んでるのかもしれんな」
そう結論づけた。
なぜなら俺は頭が良く、同時に柔軟な考えも持ち合わせているからだ。
そして誰も俺の考えを否定できない。
否定の言葉は俺の耳に届かない。届かないものは存在しない。
俺は空を見上げ、深呼吸した。
どうやら長くなりそうだ。
とりあえず魔法だとか、そんなものはどうでもいい。
俺が信じるのは筋肉と精神論だけだ。
それはいついかなる時も変わらんしな。
「さて、次はどこで腕立てをするか……いやその前に飯と寝床か」
そう呟きながら俺は歩き出す──心はワクワクしていた。
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