第15話
文化祭当日まであと1週間となり、準備も佳境に入ってきた。
うちのクラスでは放課後も作業をして帰る生徒が多く僕もそのうちの1人であった。
「とりあえずは、これで大丈夫かな」
『そうだね、ここまでやれば大丈夫でしょ』
『じゃあ、今日はここで終了して帰りますか』
『じゃあね〜』
「また明日」
冬が近づいているためか日が落ちるのがとても早くなった。
もう、あたりは真っ暗だ。
「ふぅ〜寒いな」
(コンビニでなんか温かいもの買っていこ)
「やっぱり冬は豚まんがいつもよりも何倍も美味しく感じるな」
コンビニで豚まんを買い外で食べていると1人の生徒がコンビニに歩いてくるのが見えた。
「やぁ、美桜くん」
「音無先輩、こんばんは」
「美桜くんも文化祭の準備で遅くなったのかい?」
「"も"ってことは先輩もですか?」
「あぁ、ようやく絵が完成してね」
「先輩の絵、どんな感じなのか気になりますね」
「それは当日のお楽しみってやつだよ笑」
「楽しみにしときます笑」
「ところでそれは豚まんかい?美味しそうだね」
「…食べます?」
そう、冗談まじりに言ってみた。
「いいのかい?それなら遠慮なく」
「…?え?」
先輩はそう言うと僕が食べていたところとは少しズレたところを1口パクっと口にした。
「ん〜やはり豚まんは美味しいね」
「…………」
「ありがとう美桜くん」
「美桜くん?おーい」
「…え?あ、はいお気になさらず」
「それでは、わたしもなにか買ってくるとするか」
音無先輩がコンビニに入っていく。
僕はその背中を目で追ったあと、先輩が食べたあとの豚まんを見る。
(これ…食べていいのか…?なんかの犯罪になったりしない?いや、でも、もともとは僕が買って食べてた豚まんだもんね、それを先輩に1口おすそ分けしたわけで別になにか悪いことをしてるわけではないから全然食べていいんだよな……)
「食べるか…」
『ウェーーイ』
ビクッ!!
「あっ…」
反対を歩いていた違う高校で部活帰りの生徒達の声に驚きその拍子に手から豚まんが地面に落ちた。
「はぁ〜〜まじか、」
「おや?豚まん落したのかい?」
コンビニでの買い物を済ませたのか、先輩が戻ってきた。
「はい、落としてしまって…」
「それは災難だったね笑」
「もう、最悪だ〜」
「ならこれを君にあげるよ」
そう言って先輩はグミとミルクティーを渡してきた。
「…ありがとうございます、」
「気にしなくていいよ」
(組み合わせ意味わからなすぎるんだけど…え、なんで交じり合わなそうな2つが手元にあるの)
「先輩、グミ好きなんですか?」
「ん〜そんなにかな」
「え?」
「ん?」
「ミルクティーは?」
「ふつうかな」
「え?」
「ん?」
(やばい、全く意図がわからなさ過ぎる。)
「なんで、グミとミルクティーなんですか?」
「君が好きそうだと思ってね」
「なるほど、、ありがとうございます」
特別グミとミルクティーが好きというわけではないが先輩が僕にくれたという事実だけがとても嬉しかった。
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