第5話

キンコーンカンコーン


その日の授業がようやく終わり、一息つく。

「ふぅ…ようやく終わった。」

「うーーん!!疲れたーー!!」

大きく伸びながら奏斗が大きな声を出す。

「じゃあ、俺部活行くから! また明日な!」

「おぉ、また明日な」

1つの事に夢中になれる奏斗のことを僕は素直に尊敬している。

「さてと、僕も帰るかな」


いつもの帰り道、河川敷を歩いていると草の斜面に座っている、音無先輩がいた。

「音無先輩も家こっちなのかな…?」

話しかけようと近づこうとすると、視線を感じたのか音無先輩がこちらに気づいた。

「おや、美桜くんじゃないか。」

「お昼ぶりですね、音無先輩」

「そうだな、美桜くんも家がこっちなのか?」

「そうですね、そこのコンビニの近くです。それと、"も"ってことは音無先輩も家がここら辺なんですか?」

「あぁ、そうだな。そこの整体院の近くだな。というかそんなところに立ってないで座ったらどうだ?」

「それじゃあお言葉に甘えて。」

「あぁ、遠慮するな。」

「音無先輩の家って意外に近かったんですね、あまり会わないんで気づきませんでした。」

「わたしは朝、早めに学校にいくからな、放課後も寄り道したりこうやってどこかで黄昏てたり、だから会わなくてもしょうがない。」

「なるほど、てことは今も黄昏てたんですか?」

「そうだな、この川に映る夕日がとても美しくてなこの景色を見てると頭が空っぽになるんだ。」

先輩と少し距離を空けて座って話す。

そして黄昏ている音無先輩を横目で見る。


夕日に照らされ、心地よい風で先輩の長い髪が靡く、その髪を指で耳にかける。

その光景は昨日の雨の降る教室と同じように絵画のようだった。


「おーーい」

音無先輩の呼ぶ声でハッとする。

また絵画のような綺麗さに見惚れていたようだ。

「すみません、少しボーッとしてました。」

「…分かるよ、この風景を見ているとスーッと吸い込まれるようだよな」

「え、あ、はい。」

僕の思っていることとは見当違いだが、まぁそういうことにしておこう。


「おや、もう18時かいい時間だそろそろ帰ろうか。」

「もう、そんなに経ってたんですね。」

「時間というのはあっという間だからね。」

そう先輩は少し淋しげな顔をして言う。

「君とはなにかと縁があるようだなまたなにかで会いそうな気がするよ。」

「そう、ですね。また学校で会えたら。」

「あぁ、ではな。」

先輩はそう別れを告げ僕の帰り道とは違う方へと歩いていった。



「あ…連絡先聞くチャンスだった…」


後からその話を通話で奏斗にすると

『アッハハハハ、そんなにその先輩に見惚れてたのかよ』

と笑われたので明日、こいつはシバくことにした。






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