第13話 二つ名持ちの鱗
ウェインは道具屋を出たあと、特にやることがなかったので、その後、ウェインは宿屋に戻り、その日の残りの時間を過ごしたのであった。
そしてその日は終わり次の日になる。
「……よし」
朝になりウェインはベットの上から起き上がる。そして服を着替え、腰に剣を下げてから部屋を出る。
隣の部屋…エリシアが泊まっている部屋の前に立ち、軽く数回ノックをした後に声をかける。
「…いるか?」
そう言った少し後に、何やらバタバタとした音がドアの奥から聞こえ、エリシアの声が聞こえる。
「お出かけですね!?少しお時間をもらえますか!?」
「…ああ、ゆっくりでいいからな」
起きたばかりならそこまで忙がなくてもよいのだが…と心の中で思いながらドアの前で待つこと数分…私服姿のエリシアが部屋から出てくる。
「お待たせしました!今日はどこに行くのでしたっけ?」
「ギルドに報酬を受け取れるか聞きに行く予定だ」
「はい!行きましょう!」
こうして二人はギルドに向かうのであった。
ギルドに向かう途中、エリシアがウェインに話しかける。
「そういえば受け取る報酬はいくらほどなんでしょうか?」
「そうだな…報酬などは気にしないで依頼を受けたからいくらか覚えていないな…大体5000ルミナほどだった…気がする」
「あんな危険な依頼でしたのに5000ルミナですか?もっとありそうな気がしますが…」
「まぁ、いくら貰えてもいいであろう」
「それもそうですね!その依頼のおかげで私はウェインさんと出会うことができましたし」
「…そうだな」
そう会話をしているとギルドが見えてくる。
(…さて依頼完了の確認が無事取れていればいいが…)
そうウェインは考えながらギルドの中に入る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
冒険者ギルド内
ウェインは受付嬢がいるカウンターへと真っ先に向かう。
それに気づいた受付嬢はこちらに笑顔を向ける。
「…昨日、湿霧の森での依頼完了の確認を求めたウェイン・ノクナリアだが」
「はい、お越しいただきありがとうございます、ウェインさん!」
「先日、湿霧の森に出向き、ギルド側で依頼完了と判断しましたので報酬をお渡ししたいのですが…」
「…何か問題があったのか?」
「それなんですが…お二人に少しお話…よろしいですか?」
「問題ない」
ウェインがそう言うと受付嬢は奥の部屋へと二人を誘導する。
「なんでしょうね?」
「なんとなく見当はついてはいるが…いや、何でもない」
二人は受付嬢の後ろをついて行く。
そして受付嬢が足を止めたのは一つの部屋であった。
そして受付嬢はドアを数回ノックする。
「ウェイン様とエリシア様を連れて参りました」
そして部屋の中から男の返事が帰ってくる。
「中に入れてください」
「了解いたしました。どうぞ」
そして受付嬢はドアを開け、二人を中に入れる。
部屋の奥には一人の老人が椅子に座って待っていた。
「どうぞおかけください」
そう老人に言われ、ウェインとエリシアは椅子に座る。
「私は冒険者ギルド、サンセルト支部のギルドマスター、シダ・ネイロと申します」
「俺はウェイン・ノクナリアと言います」
「私はエリシア・セインレットと申します」
「今日この場にお二人をお呼びした理由は…」
そう言って二人の目の前の机に一つの瓶を置く。
「これは俺が昨日、受付嬢に渡した物ですね?」
「その通りでございます。今回はこの…竜の鱗についてお話をするためにこの場にお二人をお呼びいたしました」
「それで?何か問題があったのでしょうか?」
ウェインが質問を投げかけるとギルドマスターは少し難しい顔をしながら答える。
「まず最初に…これはドラゴンの鱗…しかも上位種のものだということが分かりました」
「上位種…ですか?」
エリシアが聞き返す。
「そうです。ドラゴンの上位種の鱗だったのです」
「…私が推測するにこの鱗の持ち主が呪いの霧と
「そうです」
ギルドマスターは少し考えて言う。
「よろしければ、この鱗を買い取らせては貰えないでしょうか?」
「買い取る……そうか」
ウェインは少し納得したかのように言う。
「なぜギルド側からこの鱗を買い取ろうとしているのですか?」
エリシアはよくわかっていない様子でウェインに問いかける。
「おそらくだが…この鱗…相当に名のあるドラゴンの物である可能性があるのでしょう?」
「その通りでございます。少なくとも二つ名持ちのドラゴンであると私は睨んでおります」
「二つ名…とはなんですか?ギルドマスターさん」
「二つ名とは強力なモンスターや強い冒険者によくつけられるものです。二つ名はその者がどのような者なのかを簡単に表すことができる、そのようなものなのです」
ウェインが口を開く。
「話を戻しますが、なぜ二つ名持ちだと思ったのかお聞かせ願えますか?」
「はい。まず鱗の高度が異常に硬いところでございます。この鱗の硬さは並大抵のドラゴンの比にならないほどの硬さなのです」
ウェインは
(俺がやつを斬った時は硬いと感じなかったが…拾った鱗は腐る前に剥がれた物だからか)
「そしてもう一つの判断理由は鱗に宿った魔力の高さでございます。通常のドラゴンでは鱗にまで魔力が宿ることはないのですが…鱗にまで魔力を感じることができるということは…」
「それはこのドラゴンが鱗に移るほどのとてつもない魔力を有していたということを示しているです」
「…それでその鱗の持ち主がどの二つ名持ちのドラゴンなのかを詳しく調べるために買い取ろうとしたわけですか」
「左様でございます」
ウェインはエリシアをチラリと見てから言う。
「そうですか…分かりました、この鱗…お渡ししましょう」
「…!よろしいのですか?」
「ええ、俺たちが持っていても仕方がないですからね」
「ではいくらで買い取るか、ですが…」
ギルドマスターは紙を取り出して二人の前に出す。
「このくらいになりますがどうでしょうか?」
二人は紙に書いてある金額を見て驚愕する。
「な!?」「へ!?」
二人はしばらく硬直して動かない。流石のウェインもこれには驚かずにはいられない。
少し時間が経ってウェインがようやく口を開く。
「……200000ルミナ…ですか?」
そう200000ルミナ。何気なく持ち帰った鱗一つで200000ルミナ。金貨になおすと20枚、銀貨にすると2000枚、かなりの大金である。
「…少ないでしょうか?」
「…いえ、むしろこれだけもらえることに驚いてしまったと言うか…」
「ではこの額でよろしいですか?」
「少し待ってください…」
そして先ほどから固まったまま動かないエリシアの肩を揺らしながら言う。
「おい、大丈夫か?」ユサユサ
「…………はいっ!余裕です!!」
「おお、本当に大丈夫か?」
「はい!問題ないです!あまりの金額の多さに少し驚いてしまって…」
「そうだな。この額でいいか?」
「ウェインさんがいいと思うならいいと思います!」
「分かった。ギルドマスターさん、この買取価格で大丈夫です」
「了解致しました。今回の依頼の報酬である5000ルミナを入れて合計205000ルミナを金貨で15枚、銀貨で550枚にして持ってきますがよろしいですかな?」
「はい、お願いします」
「では少々お待ちください」
そう言ってギルドマスターは部屋を出ていく。
「………いきなり小金持ちになってしまったな…」
「はい…あんな大金もらうのは初めてです」
「報酬の分配は3分の2はエリシア、残りは俺でいいか?」
エリシアはこちらを向いて疑問そうに言う。
「…え?半分じゃないんですか?」
「
「そう言うならウェインさんがいなければ
「いやそう言うわけには…」
「私もここは譲りません!」
二人が報酬の分配について言い合っている間にギルドマスターと受付嬢が205000ルミナを台車に運んでやってきたのであった。
「痴話喧嘩ですか?仲がよろしいですね〜」
「ですね」
「む、そういうわけでは…」
「報酬の分配で何かトラブルでもございましたかな?」
そしてウェインとエリシア、二人の報酬分配についての言い分を聞いてギルドマスターと受付嬢が答える。
「半分でいいのではないのですかな?」
「…だが…俺はやつに弾き飛ばされて死にかけていただけの男だぞ?」
「聞いたところどちらも死にかけていた場面があったわけですし…半分の方が計算もしやすいですし…」
そしてギルドマスターが一つの提案をする。
「お二人は当然パーティメンバーなのですよね?」
「はい!そうです!」
「なら、お二人の共有財産にしてしまえば良いのではないですか?」
「見たところ金銭で揉めるような方達ではなさそうに見えますし…」
(良い方向の金銭トラブルはたった今起こってはいますが…)
「それはいいですね!そうしましょう!」
「エリシアがいいと言うならそれでいいが…」
「なら決定です!」
そうして受け取った205000ルミナは二人の共有財産となったのであった。
「…さすがにこの量のルミナは持ち歩けないのでとりあえず60000ルミナを今貰えますか?残りの145000ルミナは預けさせてください」
「了解致しました。60000ルミナを今お渡しして残りはギルドでお預かりさせていただきます。残りを下ろす際はギルドの職員にお声かけください」
「分かりました。エリシア、受け取った60000ルミナの半分…30000ルミナだ、受け取ってくれ」
そしてウェインはエリシアに30000ルミナ…金貨2枚と銀貨100枚を袋に入れて渡す。
「はい!ありがとうございます!」
「何か買いたいものがあれば遠慮なく残りのルミナを下ろしてもらってかまわない」
「はい!分かりました!」
「仲がよろしいんですなぁ」
「仲がよらしいんですねぇ」
笑顔のギルドマスターと笑顔の受付嬢が同時に言う。
「…これで用は終わりですか?」
「そうですね。お時間をお取りしてしまって申し訳ございませんでした」
「いや…では俺たちはこれで…エリシア行くぞ」
「はい!その…失礼しました!」
そうしてウェインとエリシアはお辞儀をして部屋を出ていく。
部屋に残った受付嬢がギルドマスターに質問をする。
「……ギルドマスター、あの鱗はどうするのですか?」
「選択肢は一つしかないだろう…今から竜の鱗の移送準備とギルドへの連絡を進めてくれ。送り先は…
騎士の国、セイラントだ
」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます