君に拒絶されてから苦悩と青春と別れを経た僕の愛を込めた言葉と君の返事
レクト
君の言葉
「あんた気持ち悪いのよ」
その言葉で僕の初恋は終わった。
いや、ここから始まったんだ。
僕は高竹光立。「みつたち」じゃないよ。
これで「ひかり」って読むんだ。
友達からは竹光の部分から「たけみつ」なんて呼ばれてる。
剣道なんてやったことないけどね。
なんとなく武道をやってそうに思われるお得な名前さ。
ともかく僕は振られた。
彼女の名前は野々宮夜昼。
ヨルさんだ。
金髪で目つきが鋭くて細見で言葉が強くて足が長くて鼻筋が綺麗で宿題はやってこなくて友達には優しくて弱い男には厳しくて帰宅部で遅刻魔で僕の初恋の女性だ。
僕が彼女に出会ったのは入学式から4日と8時間5分経った頃のことだ。あ、やけに時間が細かいって思った? 単に朝の8時5分だっただけだよ。つまり遅刻した時間だ。息を切らしながら走っている僕と悠々と歩いている夜昼さんが同じタイミングで校門に着いたわけだ。このときほど運命を感じたことはないね。自分の胸の熱い高鳴りと彼女の冷たい視線が合わさって僕の心を打ち砕いたね。その日の放課後告白して見事に振られたという訳さ。
彼女が去ったあと僕は考えた。
変わろう。自分を変えて彼女に相応しい男に成るんだと。
そして僕は俺に成った。
俺は身体を鍛え、技を鍛え、心を鍛えた。
一度格闘技の世界に入りライバル達との熱いバトルになりかけたけど本来の目的を思い出して辞めた。
身体を十分に鍛え終わった頃、彼女に出会った。
名前は、あー。彼女のプライバシーの為に偽名を使わせて貰う。眼鏡の似合う素敵な女性、鏡子ちゃんだ。
鏡子ちゃんは中学3年生で俺がいた中学の後輩だった。
高校を見学に来たときに俺を一目見て好きになったと言ってくれた。
とても嬉しかったし鏡子ちゃんもとても可愛かった。
だが俺は断った。
すまない鏡子ちゃん。俺には心に決めた人がいるんだ。
彼女は涙を流していた。大丈夫、君の眼鏡ならきっといい相手が見つかるはずさ。
鏡子ちゃんの眼鏡を見て気がついたんだ。俺には知識が足りないと。
俺は本を読み問題集を解きディベートに明け暮れた。
ディベート甲子園への出場を検討しているときに本来の目的を思い出して辞めた。
そんな時に出会ったのが社会人OLのオルコさんだ。当然偽名だよ。
彼女との出会いは、俺が格闘技やってたときのライバルの一人と決闘を済ませたあとの帰り道だった。彼女が路上に座り込んで泣きながらお酒を飲んでいたんだ。正直お酒の匂いは好きになれなかったけど泣いている女性を一人にはできなかった。
俺は軽々とオルコさんを持ち上げ家まで送ってあげた。人力タクシーだね。
オルコさんとはそれから時々会って悩みを聞いてあげたりしていた。普段は大人として気を張っているけど俺の前だと素直になれると言っていたよ。
オルコさんから高校を卒業したら一緒に住まないかと誘われたが俺は断った。すまない。お酒の匂いが好きになれなかったんだ。
オルコさんほどの、そうお酒好きならきっとお酒を飲める大人の男の方が似合うと思うよ。あと未成年を口説くのは社会人としては良くないと思うよ。
オルコさんを見て思ったんだ。俺は社会を知らないと。
俺は就職支援サイトに登録し四季報を読み帝国データバンクを活用した。
エントリーシートを送って履歴書を書いている最中に本来の目的を思い出して内定を辞退した。
コンビニのアルバイトの帰りに遭遇した野良ディベーターと路地裏でのバトルが白熱する中、彼女は現れた。
背中の白い羽根を羽ばたかせ彼女は確かにこう言った。
「勇者よ。我が祈りに応えよ」
俺は応えなかった。すまない。俺にはやらなければならないことがあるんだ。
俺と相対していた野良ディベーターはその祈りに応え消えてしまった。
白い羽根の君。きっとそいつが勇者さ。
その次の日、俺は夜昼さんにもう一度告白することにした。
なぜなら今日は俺が夜昼さんに告白してから丁度一年経つからだ。
一年で変わった俺を見て夜昼さんはどう思うだろうか。
緊張で胸が高鳴る。
挑んできた格闘技のライバルを返り討ちにし、闇ディベーターだった担任の教師を言い負かしてから夜昼さんに会いに行く。
「俺と付き合えよ」
様々な経験と出会いを経た俺の言葉だ。
「嫌よ、あんた気持ち悪いのよ」
それでこそ僕の初恋だ!
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