第4話 誠太の過去①
俺が自分嫌い、人を信じられなくなったのは生い立ちが原因だろう。
俺は生まれて間も無く、父の仕事の関係で名古屋から大阪に引っ越しをした。幼稚園は大阪で過ごした。そして、小学校入学の一週間前にして、また名古屋へ戻ってきた。急な事であった為、学校は俺の入学の準備をしていなかった。入学式当日、綺麗に飾られたプラカードを首に下げた子供達が並んだ。そんな中、一人俺はサインペンで名前が描き殴られた厚紙を首に下げていた。その灰色はとても目立った。
翌日から俺は上級生のターゲットとなった。足を引っ掛けられては転んで泣き、傘を盗まれては泣き、不細工と罵られては泣いた。俺は毎日泣いていた。救いだったのは、同級生達には好かれていた事だ。この頃はまだ友達に囲まれ孤独感はなかった。
小学三年生になった。上級生からのいじめは影を潜めていた。しかし、悪魔が俺の担任になった。悪魔はいわゆるロリコンだった。
女の子が転んで膝を怪我をした時、悪魔はその傷口をベロンと舐めた。その時の気色の悪い顔が今もなお、瞼の裏にこべりついている。
悪魔は授業中、いつも贔屓の女の子を膝の上に乗せていた。その贔屓の女の子は膝の上に座れば、あとは遊んでいてもお咎め無しだった。その子は実際のテストの点数がどうであれ、オール3が約束されていた。俺は必死で勉強したが、オール3を取ることができなかった。また次頑張ろうと思い直した時、その子は俺に"私より成績悪いくせに"と言った。俺は唇を噛み締め、体を震わした。そして、勢いそのままに、悪魔に授業を受けてない奴がオール3は卑怯だと抗議してしまった。その瞬間、俺は悪魔のターゲットとなった。
翌日から、俺の居場所は教卓の裏になった。教室から聞こえるクラスメイトの笑い声。悪魔の拳が振り下ろされる度、痛みが走った。しかし、それ以上に心が苦しかった。
"お前は知的障害者だ。"
悪魔にそう言われる事が日常になった。言われ続け、本当の事なのかもしれないと思った。親が隠しているだけなのではという考えが頭から離れなくなった。親に本当の事を聞き出してやると思ったが、親の笑顔を見るとそんな事はできなくなった。
悪魔の提案により、"田中誠太係"が作られた。知的障害者のお世話係という事だった。クラスメイトの女子はこの係になる事を嫌がった。まるで汚物を避ける様にこの係になる事を拒否した。俺はその反応を見る度に、生きる事が嫌になった。最終的に、何もしなくていい係だという事で、面倒くさがりの男子がこの係を引き受けた。その男子には恩着せがましく、俺がなってやったと言われた。これはかなりの屈辱だった。そして、自分は汚物と変わらない存在だと思い込んだ。
ある日、俺の友達が悪魔に蹴り飛ばされた。俺と仲良く話をしていたからだ。その瞬間から俺の周りから人がいなくなった。昨日までは、教室内に俺は存在していたのに、その日から存在しなくなった。目の前の子に話しかけても、何も返ってこなかった。
俺はベットから出たくなくなった。しかし、親に起こされては学校へ行った。俺は親には学校へ行きたくないと言えなかった。父親にいじめを受けている事がバレる事が怖かった。上級生にいじめを受けていた時、その場面を偶然父親が見かけた。父親は上級生にブチ切れた。その日の夜、父の怒りの矛先は俺にも向いた。"男ならやり返せ!"怒号と共に張り手をされた。その出来事から、父親にバレればまた怒号と暴力を受けると思っていた。
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