推しが俺を倒しに来たので、全力で推し返した件
小説王に俺はなる!!
第1話 推しが俺を殺しに来た日
この世界に“救い”なんてない。
──そう思ってた、あの日までは。
夜中、蛍光灯がチカチカする六畳間。
俺は疲れ切った高校二年生、神城レン。
進路も、友達も、夢もなくて。唯一の癒しは、画面の向こうの“推し”だった。
白銀の髪、透き通る声。
配信界の光——Vtuber《ルミナ=レイ》。
「みんなの闇を、光に変えてあげるね」
初めてその言葉を聞いた瞬間、泣いていた。
馬鹿みたいに、涙が止まらなかった。
それから俺の人生は、ルミナ中心に回り始めた。
通知が来れば即視聴、スパチャもバイト代の三分の一。
友達に笑われても関係ない。
だって、俺を救ってくれたのは──推しだから。
……けど、その日。
俺の推しは、俺を殺しに来た。
◇
放課後の帰り道。
夕焼けが溶けた空に、奇妙な亀裂が走った。
ガラスを割るような音。次の瞬間、空間がねじれて、世界の色がひっくり返る。
「……なに、これ」
街路樹が溶け、アスファルトが光る。
そして“それ”は現れた。
白銀の髪、蒼い瞳。
俺の画面の中にいた、あの人。
「――神城レン。あなたを、排除します」
息が止まった。
夢でも幻でもない。
俺の“推し”が、目の前に立っていた。
ルミナ=レイ。
俺の心を救った存在が、今は俺を見下ろしている。
「どうして……ルミナ、さん?」
彼女は首を傾げた。
その仕草さえ、いつも通りで。
けれど瞳の奥には、冷たい光。
「この世界を壊す“鍵”は、あなたの中にある。だから、倒さなきゃ」
意味がわからない。
でも、確かに伝わった。
彼女は本気だ。俺を殺す気だ。
右腕が光り出した。
刻印のような紋章が浮かび、俺の心臓が焼ける。
「やめて……くれ……っ!」
轟音。地面が砕け、衝撃波が走る。
周囲の建物が吹き飛び、視界が白く染まった。
◇
気づけば、俺は瓦礫の上に倒れていた。
息が苦しい。けど、まだ生きている。
──そして、胸の奥が、熱く燃えていた。
「……推しが俺を倒しに来るなら」
血を拭いながら、立ち上がる。
震える手を握りしめ、叫んだ。
「俺は全力で、推し返す!」
その瞬間、俺の紋章が爆ぜた。
ルミナの瞳が、驚きで揺れる。
画面の向こうにしかいなかった“推し”との、本物の戦いが始まった。
次回:「推しと俺、初めてのタイマン」
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