つめたい短歌

(モノローグ)続きばかりを求めてはやり直すから進めないんだ



ママとパパ あたしとあなた 俺と君 どれかになろう きっとどれかに


筆を折るあなたの横へ新しい筆を置くのが僕の運命


投げ入れる軌道そのまま屑籠へ もう輝かない宝物たち


三日月は気まぐれだから 温めたミルクティーをお守りにする


手を繋ぐ ただそれだけがこんなにも特別だなんて知ってしまった


自由とは呼べぬ日常 孵らない卵はゆっくりゆっくり腐る


もうじきに嵐が来ます そういえば私の隣あいていますね


雷鳴は遠く切り裂く斜陽まであなたを運ぶ無人の馬車よ


冬去れど夢見る春はまだ遠く きみの名前で例えた天気


坂道をただ駆け下りろ 人生を喜劇悲劇で括れぬ君よ


救いはある 望まれずとも手を伸ばす まだ泣けるだけの心があるなら


幸せに理由はないよ 春に咲く名前を持たない野花のように


溜息を数えるだけの亡霊になってしまえば楽なのだろう


足跡が残るも怖い消えるのも怖くて出られぬこの森からは


さて問おう 嘆き惑うは人だけか 俺の目を見て答えてほしい


主人より優秀であれ だがしかし勝ってはならぬ 従者の心得


錆び果てた鍵を回せど 光降る庭への扉は閉ざされたまま


今はまだ消せぬ電灯 人工の光で終わらぬ夜に抗う


手に届く範囲のいのち全て混ぜ染められたのさこの真夜中は


もういいかい まあだだよと繰り返す 子供のままで変わらぬ声で


朝は来ぬ そうではなくてこちらから朝の野郎を見放したのさ


さるぐつわ 丸呑みにした言葉だけ あなたにあげる 二度目の夜に


きみの言う愛はどうやら罰みたい 蜘蛛の巣にかかるちょうちょを摘む


この愛は食べられません 日曜の不燃ごみへと出してください


今しがた収穫し終えた手袋はまだ温かく膨らんでいる


ばら撒いた金平糖を踏みつけて 神様ごっこは終わりにしよう


あなたさえ消えてしまえばわたくしは幸福ですとも不幸ですとも


幸せは少し怖いね 舟のうえ揺られるうちに沈むみたいで



今日という日を買うならば一枚で『ひゃくまんえん』のおはじき使おう

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