第8話 菜月の奉仕と奪還


 熱い精液が文香の身体の深いところで脈打ち、佑樹の肉塊が彼女の膣の奥に脱力したまま横たわっている。


 文香は、佑樹の汗に濡れた背中に腕を回し、その存在を全身で抱きしめていた。彼女の肌は、情事の後の穏やかな熱を帯びている。体内を流れる精液の熱と、佑樹の重みが、彼女の心に揺るぎない多幸感を刻みつけていた。彼女の心には、過去のすべてを塗り替えた佑樹という現実の愛に対する、一点の曇りもない自己肯定が満ちていた。


 佑樹は、文香の髪に顔を埋め、深く息を吐いた後、ゆっくりと彼女の身体から肉塊を引き抜いた。その生々しい水音が、密室に響く。文香は、別れがたいように彼の腰に手を絡ませたが、佑樹は、優しくその指を解いた。


 そして、佑樹は、ベッドの隅に座り、静かにその光景を見つめていた菜月へと、視線を向けた。菜月の顔には、未だ精液が付着したままだ。その瞳には、先ほどの文香との情事を見たことによる激しい嫉妬と、満たされない独占欲が渦巻いている。


「菜月」


 佑樹は、彼女の名を呼んだ。


「待たせて、悪かった。お前が一番に、俺のトラウマを受け止めてくれたのに、文香を優先してしまった」


 佑樹は、正直な謝罪と、彼女の献身への感謝を言葉にした。その言葉は、菜月にとって、文香との嫉妬の感情を和らげる、何よりも尊い承認だった。菜月の表情に、一瞬の戸惑いが浮かび、そして期待の光へと変わった。


「っ、アンタが、謝るなんて……らしくない」


 菜月は、そう言いながらも、その口元は緩んでいた。彼女は、佑樹が自分たちの絆を、文香との背徳的な行為よりも、上位に置いていることを確認したかったのだ。


 佑樹は、ベッドの上で菜月を抱き寄せ、彼女の精液が付着した頬にキスをした。


「俺は、お前のことも、文香のことも好きだ。この歪な状況は、俺の身勝手さから始まった。でも、お前の愛を、これ以上蔑ろにはしない。菜月は文香とは別の意味で特別なんだ。菜月は幼馴染というより、妹であり、姉であり、弟であり、兄である。身近な存在すぎて失いたくない存在なんだ。文香に拒絶されるより菜月に拒絶される方がつらい。だからこの順番だった。菜月には甘えるなって言われそうだが、菜月に何度元気づけられたか分からない。俺が夢を失っても、こうしてやってこれているのは菜月のおかげだ。さあ、菜月は俺に何をして欲しい。言ってごらん。」


 佑樹の正直な告白は、菜月の心に深い安堵と、満たされない愛情のすべてを肯定する喜びを与えた。彼女の瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。それは、嫉妬ではなく、満たされた愛情の涙だった。


「佑樹……全部、全部よ。文香にやったこと、全部、私の身体に刻みつけてよ。私だけが、佑樹のすべてを、身体で受け止めるって、証明させてよ」


 菜月は、佑樹の告白を、彼女だけの特別な支配として受け取った。彼女は、文香の愛液が混じった肉塊を、貪るようにその唇に引き寄せた。先ほどとは違い、その動きには、愛情と、深い献身が込められている。


 佑樹は、菜月の体を横たえさせ、再びコンドームを装着した。彼の肉塊は、文香との結合の余韻と、菜月の愛の要求によって、極限まで硬く熱を持っていた。


「菜月、文香と同じように、痛むぞ」


 佑樹は、最後の確認として、菜月の丸い瞳を見つめた。菜月は、その痛みさえもが、自分たちの特別な絆の証となることを望んでいた。


「構わない。私だって、佑樹の特別な存在になりたい。文香に負ける気はない。全部、受け止めてやる」


 菜月は、そう言いながら、佑樹の首に腕を回し、その小柄な体躯を力いっぱい彼に引き寄せた。


「佑樹が待たせるから、私の体はもう準備が出来ている。」


 菜月は、そう告げると、その熱い腰を微かに持ち上げ、佑樹の肉塊に自ら合わせてきた。佑樹は、菜月の大陰唇を撫でると、すでに大洪水になっているのを確認した。彼女の肌は、微かな汗と体液で濡れ光り、その熱い渇望を物語っている。佑樹は、ためらいなく、膣口に浅く指を入れ、その処女の入り口を丁寧に解していった。菜月が快感に身を震わせ、苦痛のない絶頂を短く繰り返したのを確認すると、佑樹は菜月を見つめた。


「佑樹、これから私たちの新しい日々が始まる。ずっと一緒にいるから覚悟しておいて。」


 菜月の瞳は、熱い愛と、この関係を永久に独占するという強い決意に満ちていた。その覚悟を受け止め、佑樹は、菜月の身体の熱い渇望を受け止め、一気に肉塊を押し込んだ。


「っ、あああああ! 痛いっ、……でもっ、んっ!」


 菜月の口から、処女喪失の衝撃と、予想外の快感が混じり合った、激しい悲鳴が漏れた。文香の時と同じく、菜月の身体は硬直したが、彼女は文香に対抗するように、佑樹の肉塊を膣の奥で貪るかのように、腰を激しく動かし始めた。


 佑樹は、菜月の荒い吐息と、文香の熱い視線という、二重の快感に支配されていた。彼は、菜月の献身的な身体を、文香への対抗意識と、自分への忠誠心で満たしていく。菜月は、佑樹の動きに全身で応えながら、その愛を囁くような行為と、肉体的な充足を全身で求めた。


 文香は、ベッドの隅で、その光景を静かに見つめていた。彼女の顔には、嫉妬はもはやない。あるのは、佑樹という男が、自分の快感を引き継ぎ、菜月という別の女性を、愛の言葉と肉体で満たしているという、倒錯的な優越感だけだった。この歪んだ多角関係は、彼女たちの間で、新しい形の均衡を確立し始めたのだ。文香にとって、菜月は、同じ男の愛と秘密を分かち合う、運命的な共犯者だった。もはやライバルというよりも、ともに歪んだ道を歩む姉妹のようなものだと感じていた。佑樹を中心とした、この罪の上に築かれた三人の関係は、誰も入れない、新しい形態のパートナーシップであり、文香は、その非日常的な連帯感に、深い安堵を覚えていた。


 この密室での二度目の結合は、友情を破壊し、肉欲と嫉妬によって結び付けられた歪んだ多角関係の、初期形態の完成を意味していた。佑樹は、二人の幼馴染の欲望に支配される疲労と、満たされる全能感の板挟みになりながら、この罪の沼に、さらに深く沈み込んでいくのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る