第16話 海の覇者

午後七時の横浜市八景島シーパラダイス。

手懐けられて一般人に愛嬌を振りまくイルカが現れた。

イルカは左斜めの横顔(一般人の想定するイルカが見せたがるキメ角度を指す言葉。絵心のない絵描きが手癖で描く角度としても知られる)よりもずっと正面顔の方が怖いことを理解していたので、一般人に決して正面顔を見せないように努力していた。だが八景島に侵攻してきた月ウサギに貴様は海の生物の元締めとしての誇りを忘れたのかと説得され、再び正面顔を向いて邪悪な本性を表した。イルカはかつての部下である変な造形の深海生物を召集し、ついでにマグロの頭、猫の尾、女子高生の身体を持つ怪異も変な見た目だからという理由で仲間に加え、陸への侵攻を始めた。

だがいきなりゴリラ一倍力が強く、身体が大きく、優しい心を持ったゴリラがやってきて、とにかくすごい右ストレートで左斜めの顔を殴打した。

イルカは倒されたが、マグロの怪異がなぜか行方不明になった。 

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