『【画像投稿怪異(イノチビキ)】~深夜3時に、特定の加工画像をSNSにアップロードした者だけが体験する「1週間後の自分との交換日記」の法則を追う~』
ΛKIRA
第0話:呪いのトリガーと、一通のメッセージ
俺の名前は水野ユウキ。20歳。オカルト研究会所属。
……と言っても、世間一般の「オカ研」が想像するような心霊スポット巡りだとか、廃墟探索だとかは一切しない。俺たちの研究対象は、もっぱら**「情報空間の怪異」**、つまりはインターネットが産み落とした現代版の都市伝説だ。
中でも、俺がここ半年間、寝る間も惜しんで追い続けているヤツがいる。
それは、特定のSNSの裏アカウント界隈でのみ、極秘に囁かれている一つの噂。
「深夜3時きっかりに、あるノイズ加工を施した自撮り画像をアップロードすると、一週間後の自分からメッセージが届く」
そのメッセージは、メッセージアプリの個人チャットとして届く。しかし、それは一方的な「交換日記」だ。一週間後の自分が、今日の出来事を日記のように綴っている、という体裁らしい。
そして、そのメッセージを最後まで読んだ者は、例外なく一週間後、日記に綴られた通りの最悪の出来事に見舞われてしまう。それは事故、病、精神崩壊、そして──**「死」**だ。
裏アカ住人たちは、この怪異をこう呼んでいた。
『画像投稿怪異(イノチビキ)』。
命を引き寄せる、あるいは命を引っ張られる怪異。俺はそれを、単なる噂として片付けられなかった。なぜなら、そのメッセージの文体、送られてくる時間、そして予言の**「精度」に、「一定の規則性(ルール)」**が見て取れたからだ。
「……トリガーは、ノイズ加工画像、そして深夜3時」
薄暗い六畳一間。時刻は深夜2時58分。
モニターには、俺の顔写真が映し出されている。普段、人に見せることのない、無機質でどこか不気味な表情をした自撮り。俺は、その写真に、ネットの裏情報で見つけた**『特定のノイズと座標情報』**を重ね合わせ、画像を保存した。
机の上には、研究ノートと、3つのスマートホンが並んでいる。
メイン、サブ、そして、今から**『贄(ニエ)』**として使う、キャリア解約済みの古いアンドロイド端末。怪異にデータを抜き取られる可能性を考えれば、メイン端末を使うのは危険すぎる。
秒針が2時59分を指す。心臓がうるさいほど脈打つ。
「これで……解明の第一歩だ」
俺は、古い端末を手に取り、新規作成した裏アカウントにログインした。投稿フォームを開き、先ほど作成したノイズ加工済みの自撮りをアップロードする。
そして、3時00分。
送信ボタンをタップした。
予言の始まり
直後、端末が僅かに発熱した。
投稿は完了し、画像は人目に触れることのない裏アカウントのタイムラインに表示されている。何も変わらない。ただの画像だ。
その瞬間、通知音が鳴った。
『ピコン』
投稿した端末のメッセージアプリに、一通の未読メッセージ。表示されているのは、見慣れないアカウント名。
アカウント名:【一週間後の私】
最終アクティブ:3分前
メッセージの送り主が、自分自身を表す『私』を使っている。
俺は息を飲み、チャットを開いた。
そこには、文字が並んでいた。
たった今始まった、**『1週間後の自分との交換日記』**の、最初の1ページ目が。
メッセージは、唐突に、そして恐ろしいほど具体的だった。
『20XX年 10月27日(投稿翌日):
午前10時33分。いつものコンビニに行くな。特に、ポテチの棚の前で、見知らぬ女に話しかけられても、絶対に目を合わせるな。あいつは、
"
そして、そこでメッセージは途切れていた。
背筋に冷たいものが走る。
「……始まった」
俺は震える手で、メッセージを何度も読み返した。そこには、俺が知るはずのない**『明日』**の行動と、回避不能な警告が書かれている。
翌日から一週間、俺は予言と現実のズレを解析し、この怪異の法則を解明しなければならない。
そうでなければ、**1週間後の日記に書かれた、俺の『最悪の未来』**は、必ず現実のものとなるだろう。
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