今生の別れ
脳病院 転職斎
第1話
去年、老人施設で働いていた時、
首から下が麻痺して、それ以外は手しか動かせない老婆がいた。
若い頃はさぞかし美人だったことだろう。
性格は厳しい老婆で、俺のポンコツぶりにめちゃくちゃ激怒したり、かと思えばたまに褒めてくれることもあった。
そしていつもの通り、俺がドジばかり起こしてこの老婆を介護しようとしたところ、奇跡が起きた。
「あんまみたいなバカの世話にはならんけん、自分でトイレ行く!」
首から下が麻痺している老婆が自力でトイレに行ったのだ。そして、どんなもんだい!と言う自信に溢れた笑顔を見させてくれた。
本当に素晴らしい職場だ。一生ここで働き続けたいと思ったが、俺は解雇されることになった。
そして最後の日、俺が老婆に別れの挨拶を告げに部屋に入ったところ、老婆はおいおい泣き出した。
「今日で最後ね。うちゃー悲しかよ。」
あの気難しい老婆のこんな姿を見るのは初めてだった。
「本当に残念です。いつかどこかでお会いしましょう。」
俺は咄嗟の判断で、山口時代からの御守りを渡した。
老婆は、ありがとうと微笑んだ。
今生の別れ 脳病院 転職斎 @wataruze
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます