今生の別れ

脳病院 転職斎

第1話

去年、老人施設で働いていた時、

首から下が麻痺して、それ以外は手しか動かせない老婆がいた。


若い頃はさぞかし美人だったことだろう。

性格は厳しい老婆で、俺のポンコツぶりにめちゃくちゃ激怒したり、かと思えばたまに褒めてくれることもあった。


そしていつもの通り、俺がドジばかり起こしてこの老婆を介護しようとしたところ、奇跡が起きた。


「あんまみたいなバカの世話にはならんけん、自分でトイレ行く!」


首から下が麻痺している老婆が自力でトイレに行ったのだ。そして、どんなもんだい!と言う自信に溢れた笑顔を見させてくれた。


本当に素晴らしい職場だ。一生ここで働き続けたいと思ったが、俺は解雇されることになった。


そして最後の日、俺が老婆に別れの挨拶を告げに部屋に入ったところ、老婆はおいおい泣き出した。


「今日で最後ね。うちゃー悲しかよ。」


あの気難しい老婆のこんな姿を見るのは初めてだった。


「本当に残念です。いつかどこかでお会いしましょう。」


俺は咄嗟の判断で、山口時代からの御守りを渡した。


老婆は、ありがとうと微笑んだ。

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今生の別れ 脳病院 転職斎 @wataruze

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