占いを生業とする姫のもとに舞い込んだ、ひとつの仕事。その内容と、やって来た匿名希望の貴族とは……。
「妖しの力×占い×和風恋愛ファンタジー」とくれば、それだけでもわくわくが止まりませんが、この作品で特に心惹かれたのは、登場人物ひとりひとりが抱いた「心の背景」です。
妖しの力を持つばかりに大納言家を追い出された主人公の朱璃。彼女の抱えた過去や背景を思うと切なくなります。
そしてそのことに対する彼女の複雑な心情が、実に繊細に描き出されている。だから読みながら強く心を揺さぶられるのです。
彼女ににかかわる人々の心の動きひとつひとつにも、血の通った鼓動を感じます。
妖しの力、占いのシーンも素敵。陰陽道とファンタジー要素が自然に融合していて、とても美しく、鮮やかである一方、物凄く地に足の着いたリアルさがあったりして。
もちろん、じれじれと上品な甘さがたっぷりな恋愛模様も引き込まれる!
一度読みだしたら続きが気になってしかたない。そして読後は「読んでよかったー」と心から思える作品に出会えたことが嬉しくてなりません。
主人公の朱璃は高貴な生まれの姫ですが、妖しの力のために家を追い出され、平民の町で占いを生業に、師匠と暮らしています。
この占いが素敵なのです。
彼女は「見える人」で、本物の占いができるのですが、あえてその力を使わずに、相手にとって必要なアドバイスを告げるのです。
たとえ、本物の占いをしても、それは「こちらの方向が良い/悪い」という感じのものなので、それをどう読み解くかは、占い師が決めることではなくて、本人次第。
自分の運命は自分で切り拓かなきゃ、というスタンスが、格好いいです。
物語は、そんな彼女のもとに舞い込んできた、高貴な方からの事件解決の依頼から始まります。
ドキドキの恋愛あり、理不尽なトラブルあり。
黒幕に辿り着くにつれて、切なさを感じます。
はたから見れば恵まれていても、それだけではうまくいかない。ないものを求められてしまったときに、どうするか。
朱璃の「自分の運命は自分で切り開く」という生き方が、ひとつの答えを示してくれます。
物語の中だけではなく、現実にあり得ることだけに、強く心に響きます。
完結済みですので、一気に読み進めることができて、読了感も素晴らしい。
おすすめの作品です。