君とラテに沈む夜。
芙乃
1.カフェオレと出逢い
雨が小さく窓を叩く夜。
駅前の人通りは少なく、街灯が濡れた路面に淡く映る。
そんな夜に、ひとりの女性が傘をたたみ、カフェ「calme」の扉を押した。
「いらっしゃいませ。」
クリームくらい甘すぎる声が聞こえた。
カウンター越しに現れたのは、大学生らしい若い女の子。チョコレートみたいな可愛いお顔とカフェラテみたいな髪の色を靡かせて私に、
少し緊張した声で注文を聞く。
柚木 澪――20歳、夜だけバイトしている学生バリスタだ。
「えっと…ホットのカフェラテを…お願いします。」
雨で少し濡れたコートの女性は、滑らかな声で言った。
久遠 理沙――25歳、雪のように白い肌と、コーヒーのような髪の色。韓国などでも活躍するフリーのデザイナーだ。
澪は手際よくカップを温め、コーヒーを丁寧に抽出する。
その間、理沙は店内を見渡しながら、静かにカウンターの席を選んだ。
どこか落ち着く灯りと、コーヒーの香りに包まれた空間は、初めて来た場所だとは思えないほど穏やかだった。
ラテを差し出すと、理沙は微笑んだ。
「ありがとう…なんか思ったより、静かで落ち着くカフェですね。」
澪は小さく頷き、照れたように笑う。
「はい…夜だけの時間は、少し特別なので。」
その短い会話の間に、静かだが確かな気配が二人の間に流れた。
澪の心は、理沙という大人の女性の存在に、初めて少しだけ揺れはじめる――
夜のカフェには、まだ知らない二人の時間が、ゆっくりと流れ出していた。
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