第46話:深層領域①
――――マキは、味方であるカズマ隊員がいる地点へと急行していた。
なぜなら、カズマが敵のリーダー格であるヨハンを尾行しているからだ。
そして、ヨハンが本隊と合流したから。
――つまり、ヨハンを含む敵本隊8名を、味方で取り囲み――殲滅する絶好の好機!
――国衛隊隊員カンナの殉職を確認した直後、オウカ隊員と合流。
そして、私はその後すぐに、カズマ隊員が視認し続けているヨハン含む敵本隊の居場所へと、走り出した。
(オウカ隊員は、カンナ隊員の両目を閉じた後、そこに膝をついて黙祷をしていた。親中察するに余りある)
ケンジは、「遅い俺に構うな。先に行ってくれ。すまん」と行った。
あと5分くらいでヨハン含む本隊の位置まで、行けるか?
他の隊員達にも、情報課から ”ヨハン含む本隊がいる地点へ急行、見つからぬ様に待機せよ” という主旨の指示が行っているはずだ。
私と同じ地点へと、急行している。
無論、大勢が揃うまでは待っていられない。
それだけ時間がかかる。時間がかかるほど、魚釣島に散っている敵兵たちも、徐々に本隊に戻ってくる。
その前に、ある程度の頭数が揃ったら、タイミングを見計らって一気に――
――マキの元に、国衛隊の情報課から ”新たな指示” が届いた。
(送信元は情報課からなのだが、この ”新たな指示” は極めて重要な為、上層部の許可が必要。なので、実質は上層部からの指示といえよう)
それを確認したマキは、脳内で――電気信号が激しく発火した。
両腕に、血管が浮き上がる。
青筋が立っていく。
――冷静沈着に、怒りと暴力性を遺憾なく発揮できる。
「はああああぁぁぁ――」
マキは、走りながら、長く息を吐く。
眼は、完全に据わっている。
――完全に据わった眼が、斜め右前方へと視線を移した。
一直線に走っていたが、そちらへと方向転換。
マキは、左手で鞘を支える。
――怒りの感情は、”暴力衝動” と、それを ”抑制する理性” が、衝突して生まれるのではないか?
そんな事を、以前考えたことがある。あながち間違ってもいないだろう。
なぜなら ”殺意” に没頭できる今は、怒りの感情を忘れている……少なくとも自覚できないからだ。
――マキは、右手で日ノ国刀の柄を握る。
眼前にいる――2名の男。敵兵。
大陸製の剣を持っている。構えた。
峰打ちは、もう不要だ。
――極限まで、没頭――
血が舞った。
生首2つと共に。
”あれ、空を飛んでる?俺……×2”
――回転しながら宙を舞う2つの生首は、走り去っていくショートヘアの女を視認する。
”くそっ、突破された!すぐに追いかけ――×2”
ショートヘアの女を追跡すべく、走ろうとするが、一向に――走れない。
”ん……首なし人間が2体、立ってるな……×2”
回転する2つの生首同士の視線が、合った。
”ああ……俺たち、もう一緒に……酒を……×2”
2つの生首が、地面で少し跳ねた。
”……………………×2”
――マキを含む全隊員の視界に表示された、”新たな指示”
[〈重要〉尖閣諸島において、敵兵の殺害を全面的に許可する]
つまり【敵兵の殺害許可】
”敵兵を見つけ次第、殺害してもよい” という指令だ。
それはつまり、尖閣諸島での小競り合いの域を遥かに超える――
北夕鮮との全面戦争が始まる事を、意味していた。
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