絶命の学園デート

 .......

 ニコニコっ⭐︎ わくわくっ⭐︎


「流花」

「はい」


「ちなみにその拒否権ってのは」

「ないですよ」


「悪いけど今日は家で妹と予定があったんだ、また今度ってことで」

「予定なんてなかったからお金持ってこなかったんですよね」

「先輩?」

 じぃーーーっ


 まずいことになった これは良くない

 今から流花と学園でデートなんてしたら、遙どころか診川にだって見つかる可能性が高い。

 んでもコイツには俺が金がないのは知られてる、デートをOKしたのは俺だ

 ...腹括るしかないな


「わかった、後には引けない」

「俺が内容を確認しないでデートをOK出したのが間違いだったけれど、流石に撤回は出来ない。」

「約束は守るわ」

 その発言を聞いた流花は口の端を少し上げて ゆっくりと身体を近づけてくる


「いいんですかぁー?きょーは遙さんと約束あるんですよねぇ?」

「それともぉ...」

「先輩ってそういうのが趣味なんですかぁ?」

「それも面白いかもしれないわ」

 ふーん...


「さいてぇー♡」


 流花はまず間違いなく今日の騒動を知っている その上でこのデートを持ちかけてきた。

 こいつは表と裏の顔を持ってるはず。表面上では人を揶揄って嘲笑うだけが目的の女だが

 流花の本当の目的がよくわからん けれど俺にとっても案外悪くないかもな


「ほんと先輩ってひどい人ですねぇ♡」

 阿久津流花 こいつを知る動機にもなる

 この行動の外傷はデカいけれど、大きなデメリットを踏んでもこのデートを取る価値がある


「もし遙さんに見つかったらどうするんですかぁ?」

「知らんが」「どうにかするしかないだろ」

「実は見せつけたかったり...♡」

 理由付けはそれで出来るか なら


「それもいいかもしれないな」

「うっわ!!先輩マジでクズすぎでしょ...」

「クズ男だ♡」

「首謀者はお前だ 俺がクズならお前はドクズだな」

 いつも俺が見てる阿久津流花はあくまでも表だけ 流花が遙に対して何かアクションを起こそうとしている今なら掴める物があるかもしれない そんな事を考えていると


「まぁーでもぉ」

「先輩が思ったよりも乗り気で流花ちゃんびっくりですよぉ」

 意外だったのか流花は少しだけ驚いたような反応を見せる


「だって遙さんって先輩の大切な幼馴染ですよね?私がやろうとしてることって言ってしまえばそういうことですよ?」

「持ち掛けた私が言うのもなんですけど、」

「いいんですか?それで」

 俺が幼馴染の遙に対してそんな事をしようとしている それが純粋に気になってるぽいな


「俺も最初阿久津に言われた時は反対だった ただまぁそうだな言ってしまえば」

 含みを持たせる 少しだけ溜めて言葉にする


「少し意地悪でもしてやろうと思ってな」

 実際の目的は違うけど それはそれとして事実俺は今日遙に社会的に殺される所だった。

 先輩の介入がなかったら本当にどうなってたか 

 そして俺の発言に阿久津は食いつく


「意地悪にしてはタチが悪いとおもいますよ」

「遙さんって本気で先輩狙ってるんで。こんな事したら私も多分色々危ないかもしれませんね」

「でも」

 流花は少しだけそわそわしながら周りに視線を飛ばして、

 そして 再び俺の顔を見て伝える


「私も遙さんに意地悪したくなってきましたっ♡」

 こいつの意地悪か ろくでもないんだろうな


「なら互いに目的が一致したな、最初は俺も反対だったけど今は同意してる」

「てことで流花、お前の考えてる意地悪ってのは一体どんな内容だ?」

「お互いに目的が同じなら教えてもいいだろ?」

 そうして俺は流花の目を見るが 流花は特別目を逸らすわけでもなく質問に答える


「それはですねぇ〜」

「秘密ですっ♡」

「でもでもぉー?もしかするとぉー?」

 そのまま流花は身体を寄せ 俺の耳元で囁く


「遙さんよりも」

「もっとエグいヤツかも♡」


 それを聞いて俺は 少しだけ声を上げて答える

「ちょうど欲しかったんだよな 刺激」

「遙よりエグいんだろ?」

「失望させるなよ 流花」


 俺がそう発言すると-- 

 ......

 流花の表情が少しだけ変わった気がする

 何かを考えているのか 別のことか


「ねぇ先輩」

 先程よりも確実に 流花は距離を縮めてくる


「私遙さん嫌いです」

「診川さんも鷹司さんも先輩の近くにいる女」

「全部嫌いです」

 少しじゃない 明らかに阿久津の雰囲気がいつもと違う


「先輩」

「私先輩のこと好きです」


 俺を見る目に揺らぎがない 一点だけを見据えている

 好きな相手と密着するほど距離が近いのに 感情の揺れさえ一切感じない 

 阿久津はただ俺だけを見ている


「阿久津お前は」

「流花」


「流花って呼んでください」

「じゃなきゃ私」

「こうするしかなくなっちゃいます」


 いつからか どこに隠してたのかわからないモノ スタンガン

 その黒く光る得物を後ろから取り出して---俺に告げる


「先輩」

「幼馴染の脳破壊 しちゃいましょ」


 そうか

「さっきまでは乗り気だったんだけどな」

「流石にそれを見せられたらOKとは言えないな」

 さっきのこいつの変化 それが少しわかってきた


「ならここで先輩を気絶させます」

「それは困るな 俺は今日お前とデートだろ?」

「先輩は乗り気だった でも今は違う」

「そうですよね」

 流花は得物ではなく身体を近づけて 俺に押し付けてくる


「先輩はバカですけど、今自分が置かれてる状況ぐらい分かりますよね?」

「バカだからわかんねぇな」

「そうですか じゃあ仕方ないですね」

「私は今先輩が欲しい 他の誰にも盗られたくない」

「だからすいません」


「一度眠ってください」

 その瞬間 勢いよく俺に向かってスタンガンを突きつけようとして---


「だってお前」

「俺の事好きじゃないだろ」

 ---その手が俺の寸前で止まった

 そしてそいつは 顔を上げニコリと微笑んで一言


「だから嫌いなんですよ」

「バカの癖にそういう鋭いところとか」

「ねぇ先輩」


「先輩って本当になんなんですか」


 こいつの今の関心は俺にある

「俺もわかんねぇ バカだからな」

「でもそんなバカでも気づけるもんでな」


「表のお前と今のお前 今のお前が本心だな」

「そんで?」

「学園デートはどうするんだ?」

 今の状況 阿久津としてはいい物ではないはずだ


「そりゃもちろん決まってますよ」

「このまま始めます」

「遙さんの脳破壊は目的通り行う」

「そして最後は」


「先輩の立場を破壊する」

 瞳には覚悟がある それが全身に伝わってくる


「先輩」


「退学前の最後のデート」

「楽しみましょーねっ♡」


 今の阿久津の目的は俺の退学 いやもしかしたらずっとそうだったのかもな

 それなら何だか申し訳ないな。なら尚更


「学園最後のデートが可愛い後輩とってのも」

「悪くないかもな」

 退学するわけにはいかねぇよな 

 だって俺は


 お前をヤンデレに育成しないといけないからな


 流花 イベントを作ってくれてありがとう

 これでようやく本当のお前の育成を始められる

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