創作メモ『雲母の娘とあけしの娘』

『雲母の娘とあけしの娘』

https://kakuyomu.jp/works/822139837323784223


は、宮沢賢治『めくらぶどうと虹』のようなテイストで書いてみたいと思って書いた短編です。


事前設計としては、ストーリーというより、文体に重点を置きました。


必ずしも達成できたわけではありませんが、次のような文体仕様書を作ってみました。



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## 【文体仕様書】


### 1) 叙述視点


* **基本視点**:三人称(限定的内面描写型)


* 語り手は「自然」または「風・光」といった観察者的存在。

* 登場人物の心理は、行動・感覚・自然の変化で示す(直接的な心情語を避ける)。

* **心理距離ルール**:


* 通常:距離Ⅲ(心の動きが風景や物象に転写される)

* 高揚時・クライマックス:距離Ⅱ(比喩的内面描写が自然と同化)

* 絶対にⅠ(主観的独白)にはしない。


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### 2) 文密度


* **一文平均語数**:18〜25語

* **最大語数**:40語まで

* **句点比率**:全体の文節に対して句点は15〜20%(呼吸の間を長めに保つ)

→「、」による詩的リズムを重視。


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### 3) 語彙


* **動詞優先規則**:


* 動きを持つ自然現象動詞を優先(例:ふるふ、ゆらぐ、にじむ、こぼれる)

* 「する」「ある」「いる」は極力回避し、象徴的動作語で代替。

* **五感語リスト**:


* 視覚:透く、きらめく、沈む、燃ゆ、霞む

* 聴覚:鳴る、しづまる、ささやく、息づく、ひびく

* 触覚:つめたい、やはらかい、ざらり、ぬくい

* 嗅覚:すこし酸い、霜の匂ひ、草いぶき

* 味覚:ほろ苦い、蜜のよう、塩をふくむ

* **禁止語(クリシェ)**:


* 「心が痛む」「涙がこぼれる」「永遠」「運命」「純粋な愛」などの抽象的情感語。

* 「彼女は悲しかった」「美しかった」など直接評価語。


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### 4) 比喩


* **一次メタファ群(中核3)**


1. **光/火**:生命・感情の顕現。

2. **水/川**:時間・記憶・魂の流れ。

3. **風/音**:伝達・約束・運命の知らせ。

* **二次メタファ群(補助5)**


* 霜:変化・試練

* 鈴/音:記憶の残響

* 虹:関係の結び目

* 月/星:観察者・無言の承認

* 花/実:生の儚さと再生


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### 5) 会話


* **話者識別のための口調シグネチャ**


| 話者 | 口調シグネチャ1 | 2 | 3 |

| ----- | ------------------ | --------------------- | ------------------------- |

| あけしの娘 | 「わたくし」一人称使用/柔らかい敬語 | 文末に「…のです」「…ませう」 | 感情が昂ると助詞を落とす(例:「わたくし、もう」) |

| 雲母の娘 | 敬意ある中性的語調 | 比喩で返す(例:「あなたは光の形ですね」) | 「えゝ」「まあ」など古風な感嘆語 |

| 風の郵便屋 | 口笛のような調子/文尾に短い擬音語 | 語尾が軽い(「〜ですとも」「〜でせう」) | 名詞止めを多用(「風の知らせ、届きました」) |


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### 6) 構文


* **倒置**:章末・感情の転調部でのみ使用(最大2回/章)

* **反復**:「だいぢやうぶ」「すきです」など象徴語のみ、1章あたり3回以内。

* **列挙**:三段構成が基本(例:「風と火と、そして音と。」)


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### 7) リズム


* **段落長分布指標**


* 短段(1〜3行)60%:詩的呼吸を刻む。

* 中段(4〜7行)30%:描写や情景転換。

* 長段(8行以上)10%:クライマックスまたは象徴説明。


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### 8) 象徴運用


* **出現回数目標(作品全体)**


* 光/火:10回以上

* 水/川:8回

* 鈴・音:6回

* 虹:3回(章転換ごと)

* **終盤の意味反転条件**


* 「火」=消えるもの → 「受け継がれる光」へ

* 「硝子」=冷たさ → 「記憶を映す温度」へ

* 「虹」=儚い架け橋 → 「永続する道標」へ変化させる。


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