貴腐人による、恋愛小説の創作論…っぽいもの

宝井星居

第一回 恋愛小説でのジェンダーの取り扱いを考えてみた

 タイトルはこうですが、自分はフェミニストでもなくただひたすら小説を書いている人です。ジェンダー論と思われた方の期待には添えません、すいません。

 といっても平均的な小説の創作論ではありません。今書いている貴方のラブコメの参考にはあまりならないかも。書き手は昔からの人ですし……かなり好きなことを言いたいように言ってますので、そこは注意が必要かと😇


 少し前に面白いなと思ったことがありまして。

「戦犯」という言葉を使いたがるジェンダーは、ほぼほぼ男性がわなのね。 

 女性で自分から「戦犯」呼びする人って、周囲にいてないかなあ。 もしいたら私の不明ですいません、なんだけど。  

 女の人は言いませんよね、あまり。というかほとんど「戦犯」なんて言わない。


 ジェンダーボキャブラリー、とでもいうものを小説を書いているととても意識します。 

 私は女なので「男の人ってこんなこと言わない」と男性の読み手に言われたら、ソコをかなり気にします。その方がそう思うだけ、共通したコンセンサスがある、少ないけど有名なケースにはある。などなどそのケースごとに判断したり、削除して書き直すことはしています。


 また逆に「こんなことをこういうシーンで女の子は言わないよね」という男性書き手の作品も存在するだろうと思います。善い、悪いは別にして。


 WEB小説の世界で、男性の書き手さんが「恋愛ものって難しい、特に女性心理が」とおっしゃっていたのを思い出します。

 同じく男の書き手さんが「ボーイズラブやJUNE小説を読むと、女性の心理がわかる」と答えていて、うーむなるほどなあ。と思いましたが完全に同意したわけでもなく。

(これって女性一般のコンセンサスでなく、有名で顕著な例に学ぶってやつかなあ)


 個人的には、ご自分の恋愛経験から、またリアルでうまくいかなくてもその先どうなったかを願望含みでいいから展開させてくれると、佳いものが書けそう……も個人的に期待があります。


 BL小説をそのまま受け役を女性自身に、攻め役を理想の(バリタチと確かに言われますけど)男性とすると矛盾やズレが微妙に出てしまいますので! 

 典型的な受けさまに、年下のいじめられっ子、薄幸の美少年だったり、借金のカタに富豪に売り飛ばされた青年などが登場します。これを単純に女性作者の自己同一化/化身と思うと短絡な気がしますよ?

 むしろ攻めさまが書き手という場合も多いですし。イジメから受けを守り抜いてラブラブ、捨てられた子猫だったのを洗って傷も治して美味しいもの食べさせラブラブ……アラブの大富豪にこっちがなりきれたなら、オイルマネーでなんでも叶うし好きなものも手に入るじゃない? そういう観点もあるんです。


 他にもいろいろな楽しみや仕掛けもあるので、BLはストーリー自体を面白がってアイディアに感心したほうが得ですよ。オメガバースは優れたSFのガジェットだし!あたりまえ体操。


 それとも別に、受け様からだけ見た世界だとして読んだら、書き手としてはちょっともったいないかも。一人称小説と、三人称小説の違いみたいな? 一人称は読むのも書くも手軽ですけど落とし穴もある。どうしても世界の見方が一方向に偏ってしまう。恋愛小説というか恋愛の書き方の手本にするなら、両側の心理を追うべきだし考えるべき。その点はBLも男女の恋愛にも特段の差異はないかと。  

 ちょっと思い出したのが「光は直進するが、影とは光のない所をぜんぶ覆う性質がある」ということですかね。 


「対象だけでなく世界そのものを、光の粒子の性質を捉えて描きだしたい」と美術学校のデッサン科で言われたことがあります。


 小説を教わった中島梓師匠からは「その世界の匂いを読み手に伝えよう」とよく言われました。


 たとえ描き出す部分(キャラの恋愛)は小さくても、そこに特別の(作者には見える)世界があることを感じさせて。


 恋愛テーマの作品でジェンダーにとらわれすぎない、が現代の作家、読み手に浸透してきているのかもしれませんが。


 まぁ「男ならこう言う、やる」「女なら・・」をいちいち意識したり検証するのがめんどくさくなったから、ル=グゥイン先生は「闇の左手」を書いたのかな? あれってかなり入り組んだ封建社会の政争の物語なのよね。ジェンダーの無い世界でも、権力の抗争は起きる、ましてや…という最高級の皮肉なのか?


 蛇足になるかもしれませんけど、女性作家が描く「宰相キャラ」の頂点に燦然と君臨するのが、 両性具有のゲセン人の王国の宰相エストラーベンと、「私説三国志」の諸葛亮孔明・丞相というキャラクターは鉄板、私の世代なら。 あの話を若くしてお書きになった江森先生すごいよね。直接お会いし質問させて頂いたことがある。


 しつこくもう1行。 萩尾望都先生の文庫の解説だったと記憶するけど、故・小松左京先生が「女性SF作家に(神のごとき)スーパージェンダーの作品を期待する」と書かれてたのをしみじみ思い出します。……3行あったw



〈追記〉

 女性が「戦犯」なんて口にしないだろう、と最初の方に書きましたが。

 X(旧ツイッター)の中で、お偉いジェンダー論、女性学の先達である女性学者さんが、政治家に対して「戦犯」呼びをポストしていました。おばあさまですのでもはや戦場に赴く可能性もほぼないと思います、平和と安泰のこっちの岸で使う言葉はとても醜悪に響きましたが……個人の感想です。



    第二回、三回もあります。よろしくお付き合い下さい。

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