ぽち

ゴミ

第1話


「ワンッ」「ワンワンワンッ」


ぽちは吠えながらじゃれついてくる

私がぽちを抱えるとぽちは息を吐きながらほおずりしてくる、くすぐったい

抱え上げてぐるぐる回る、ぽちの重さを全身に感じる


「ワンッ」「ワンッ」「ワウッ」「ワウッ」


ぽちは嬉しそうに顔をくにゃーとする

私が左手を出して、「はい、お手」と、言うと

ぽちは前足をちょこんと出して私の手の上に乗せる


そろそろ食事の時間だ、ドッグフードを出して皿に盛る

しかしぽちは寄ってこない


「ぽち、食事だぞー」


ぽちは顔を強張らせドッグフードの皿を見つめている

合わないのかもしれない

もっと良いドッグフードにしておけば良かったのかもしれない

だが、今はこれしかない


「ぽちー、ちゃんと食べないとお腹すくぞー」


ぽちは怒りの表情でこちらを見た

いやだね、こんなの食えるか」


私はカチンと来た

「厭だとは何だ、君はぽちだろう、ぽちなら喜んで食べろ!」


ぽちは増悪ぞうあくの表情で睨み返してきた

「君が!、奥さんにもぽちにも逃げられて、姫香ひめかちゃんにも

愛華あいかちゃんにも彩菜ちゃんにも打ち捨てられて可哀想だから

せめてもと、こうしてぽちの代わりをやってあげてるんじゃないか!」


私は憤激の余りに絶叫した

「オマエが親と親戚と後輩からむしり取った3千万、消費者金融から借り込んだ2千万

全て肩代わりしてやったのは誰だッ!

会社で横領した4千万ッ!、俺が気づいてないとでも思ったかッ!

このまま警察に駆け込んでやってもいいんだぞ!」


「くぅーん」

と、ぽちは縮こまる、きゅーとしゃがみ込みすり寄ってくる

小さな声で「わんっ」「わんっ」と鳴き、私の靴を舐め始める


私は背広の内ポケットから札束を取り出した

匂いを嗅いだのかぽちは顔を上げ爛々と光る眼で札束を追う

私はシルクハットを脱ぐと瞬間接着剤でって札束を貼り付け

フリスビーの要領で向こう側へと投げた


札束のついたシルクハットがすぃーと飛んでいく


「ワーウッ」「ワウッワウッ」「ワンッワンッ」「ワーンッ」


ぽちは前足を伸ばし飛び跳ねながらその後を追っていく

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