さよならの花束を遠い貴方へと
無趣味
1話目
春の陽射しが教室に差し込み、窓際の席で俺、高城透は、机に突っ伏してぼんやりしていた。
「透、起きろって」隣からそう声をかけられる。
顔を向けると親友の小川翔だった。
「わーったよ。」と渋々顔を上げると
ちょうど担任の中尾先生が教室のドアを開けて入ってきた。
その隣には、見たこともない女の子がたっていた。
「お前ら席座れー!これから転入生紹介するからな。」
まだ高校生活も1ヶ月ほどしか経っていないこの時期に転入生なんて珍しいな。なんて思いながら俺は女の子の方に目を向ける。
黒髪の女の子は名前を
その後、中尾先生が俺の隣を指さし、
「そこ、ちょうど空いてるし美咲の席な。じゃ後は自習かなんかしといてくれ」と言って足早に教室を去っていった。
宮本さんがこちら歩いてきて、俺の机の前に立つと少し俯きながら
「あの…これからよろしくお願いします」と少し小さな声で言ってきた。
俺も「うん。よろしくお願いします。宮本さん」と他人行儀な態度でそう言う
彼女席に着くと、度々こちらの方をちらちらと見てくる
内心では「こんな状況どうしたらいいんだ」と俺は顔を赤くなっているのを誤魔化すように机の木目をジーッと見る
そして、遂に美咲は「あの……これから席っ、隣なので!何かあったら頼ってください!」と向かい合って話すにしては明らかに大きすぎる声量で言った。
いきなりの大声に思わず「ああ…うん。よろしく……」と返す
その会話を聞いて、今までこちらの様子を見ていた桜と翔がすぐに反応した
桜は腕を組み、目を細めながら笑う。「良かったねモテモテで。どう思いますー?翔さん?」
桜に続いて翔も茶々を入れる。「いや全く桜ちゃんの言う通りですわー!」
「うっせ黙ってろアホ2人組」
「誰がアホふたりよ!アホなのは翔だけでしょ!」
「いやいやいや!?なんで?俺たち仲間じゃん!急に裏切らないで?」
「貴方中学三年生の期末140位中何位だったのか覚えてないの?」
「106位です…すみません…」
「そうよねぇ〜?このままじゃ私たちと一緒の高校いけなぁ〜いって14位の私に助けを求めてきたの誰だったかしらね?」
いかにもドSっぽい笑顔を浮かべながらそういう桜に
「ほら、そこら辺にしとけよ。宮本さんがついていけてない」と言う。
「……ごめんなさい。」
「いっ!いえ!全然。おふたりが仲良くて羨ましいです!」
休み時間になると、僕たちは教室の隅で昼食を取りながら話すことになった。
翔が軽く笑いながら言う。「多分さー俺の美咲ちゃんの印象酷いよね」
「仕方ないわね。全部本当のことなんだし」
「んだとぉ?」
そんな2人を見て宮本さん少し戸惑いながらも、俺と少しずつ会話をした
勉強の話から些細な趣味まで。途中から翔も参戦してきて、恋愛関係の話をしようとしていたのでみぞおちに1発入れて反省させた。
放課後になると、自然と話題は明日の土曜の予定に移った。
桜が「明日、土曜だし、どこか行かない?」そう言うと翔はすぐに食いついた
「おお!?いいじゃん!美咲ちゃんも一緒にいこーよ!」と言うと宮本さんは少し照れたように微笑み「いいんですか?ありがとうございます!」という
その笑顔に僕は少しドキドキしながら「俺も行くわ」と言うと
僕の言葉に、桜はすぐに顔をほころばせ、翔も肩を叩いて大げさに喜ぶ。
「よっし!部活サボる口実できたな」
翔は冗談めかして言うが、その目はわくわくを隠しきれずキラキラしていた。
美咲はふんわりと笑い、僕たち四人は明日の計画を話しながら教室を出た。
春の夕暮れが校庭をオレンジ色に染め、まだ知らない一日が終わろうとしていた。僕と美咲、そして翔と桜
これから始まる日常の一コマ一コマが、静かに、でも確かに二人の距離を縮めていくことを予感させていた。
「あっ。そうだ」
俺と宮本さんが2人きりになった時大切なことを忘れていたことを気づいた。
「宮本さん今スマホある?」
「あるけど…どうしたの?」
「ほら、急に集合場所とか時間ズレるかもしれないし。メッセ交換しない?」
なぜか心臓をドクドクした。
「そ!そうだねすっかりその事失念しちゃってた。こちらこそメッセージ交換させて貰ってもいいかな」
そんな会話をした後、俺のメッセージアプリの、お気に入りの欄に一人新たな人が追加されたのだった
さよならの花束を遠い貴方へと 無趣味 @mumeinoshikisainomonogatari
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