第6話 獣の森、人の声
脇腹の痛みがすっかり良くなった頃、季節は、夏に向かっているだろう。草木が葉を伸ばし、太陽に向かって沢山伸びてきた。
まだそんなに暑くはない。そして、この頃には何となく、身体強化を使えるようになってきていた。
そのおかげか、ゴブリンにもフォーンラビットにも、一撃も貰わず、倒すことが出来るように。
それともう一つ、アッシュは魚を獲れるようになっていた。
あの熊の魔物が、やったように、石を投げたが、全く上手くはいかず、何度やっても結果は同じだった。
ムカついてきて、ある日、身体強化を使って思いっきり投げつけたら、プカァっと浮いてきて、驚いているうちに、魚はしばらくして慌てて逃げて行った。
それからは、時々、そうやって魚を浮かせて、直ぐ、水に入って掴んで岸に投げるようになった。
焼いた魚は美味いが、骨が細かくて、食べるのにコツがいるようだ。
それと、あの森にいる熊の魔物だが、川向こうに住んでるようで、時々、獲物を狙っていると、見かけることがあった。
何度も怖い思いをしたが、まだアッシュの存在には気が付いてない。
それと最近、フォーンラビットを獲れる回数が減ってきた気がする。
だがらアッシュは大きな木の周辺を彷徨いて獲物を探すようになっていた。
その分、ゴブリンに出会すが、三体までなら、何発か貰いながらも倒すことが出来る。
ゴブリンを倒し、森で生活しているおかげか、ゴブリンは気配でゴブリンだと分かるようになったし、フォーンラビットも同じ様に分かるようになっていた。
森を静かに散策していると、ボアって呼ばれる魔物を見つけた。コイツは肉屋で売られていたのを見た事があった。だが、生きてるのは初めてだった。
静かにその様子を見ていると、どうやら何かを食ってるようだ。
そーっと見ていると満足したのか、ボアは、森へ戻って行った。
ボアが立ち去ったのを見て、そっとその場所に近づくと、何かの木の実を食べていたみたいだ。
プアーに似ている。落ちていたそれの匂いを嗅ぐと、すごく甘い良い匂いがした。
アッシュは木に登って、プアーみたいに赤くなってるヤツを一個、ちょびっとだけ齧ってみた。
…めちゃくちゃ旨い…!!
すかさず、何個かもぎ取ると、急いで大きな木の上に帰った。
それを、木の上で食べてみた。
それは瑞々しく、プアーの実くらい甘くて美味しかった。
…あっという間に食べ切ってしまった。
もう一度取りに行くと、またボアがいた。
さっきのボアより、一回り小さいから、先のヤツとは別のヤツだろう。
そいつが立ち去った後、また木に登って、何個かもいだ。よく見ると、鳥も食べに来ているし、虫も食べている。
…良いものを見つけた。だけど、ここは川辺と一緒で、色んなヤツが現れる場所かも知れない…。
気をつけないと、こっちが殺られる…。
素早くその場を後にして、木の上それを隠して、また一個だけ食べて、川辺へと戻って獲物を狙い、静かに身を隠すのだった。
アッシュは久しぶりに、ゴミ捨て場に来ていた。
と言うのも、最近、ちゃんとメシにありつけているせいか、服が小さくなってきたからだ。
何枚か拾ったり、剥ぎ取ったのを持ってるが、こんなもんはいくらあってもいいからだ。
良いものを二つ見つけたところで、見張り番に見つかり、急いでその場を逃げ出した。
もう少し見たかったが仕方ない。
一旦、スラムの根城にそれを隠して、井戸へ水を飲みに向かった。
水を飲んでると、大人が来る気配がしたので、素早く逃げようと体勢を整える。
「おい。アッシュ、ちょっと待て。」
そう声を掛けて来たのはベッポだった。だが、アッシュはすぐに逃げ出した。
「おいコラ!待てって!!」
誰が待つか腐れ野郎!!
すぐさま、逃げ、大回りして根城に帰ってきた。
…この辺じゃ、俺の顔もバレてるが…移動して、違うしらねぇ場所に行けば、その場所にやばいヤツがいるかもわかんねぇ。
…クソ。面倒だ…。
アッシュは荷物を纏めて、森に帰った。
そんな事を繰り返していると、季節は秋になってきて、最近枯れ葉が増えてきた。それに朝晩は、結構冷える。いつものように井戸に水飲みい行った後、森に帰り、大きな木下で、川辺に向かおうとしていた時だった。
人間がいる気配がして、そっちを向き、棍棒を構える。
「わぁっ!ビックリした。」
「どうした…って子供か…?」
「ホントだ…君、こんなところで何してるの?」
コイツらは…おそらく冒険者…。
若い女と男の四人組か…。
「……それ以上近づくんじゃねぇ…。」
ジリジリとゆっくり離れながら、棍棒を構えたまま下がっていく。
「怖かってるじゃない。トニーの顔が怖いから。」
「俺かよ…。」
向こうは余裕の態度だな…。
「…何しに来た。」
「はぁー…まぁいい。お前、この辺で熊の魔物見てないか?」
熊の魔物…きっとあの強そうな魔物だろう…。
「…ただじゃ教えねぇ。」
「…だってさ。」
「あぁ?…んじゃ何が欲しいんだお前。」
「…ナイフをくれたら、教えてやる。」
四人組は考えるようにコソコソ話している。アッシュはいつでも逃げれるように辺りを観察する。
「じゃあ、私のあげるわ。…ウソついたら、捕まえて衛兵に突き出すからね。」
「…分かった。」
そう言うと女の冒険者が、ナイフを投げて寄越した。
それは素早く、それを拾って、棍棒を構え直す。
「…そのまま、離れて着いてこい。」
「…コイツ、ムカつくガキだな…。」
「まぁまぁ。知ってるみたいだし、いいじゃない。」
「…はぁー。」
一定の距離を保ちながら、川の方へ案内していく。
そして河岸に着くと、あの熊が時々現れる、大きめの岩がある場所に連れて行った。
「…この川の向こう。あの岩がある奥の方だ。」
「おい、ガキ、ホントだろーなぁ?」
「…時々、この辺に来てる。向こうに行けば、多分、分かるはずだ。」
「…まぁいい。嘘だったら、とっ捕まえてブン殴るからな。」
「もう、いいじゃん、とにかく行ってみようよ。」
「…あぁ。」
そう言って、あの冒険者どもは、川を渡って向こうに歩いて行くが…。
…アイツら、あの熊の魔物に勝てんのか?
ジャンニの方がコイツらより強そうに見えるが…。
まぁ、魔法がたくさん使えるのかもな。
アッシュは森の中に入るのを見送ってから、いつもの様に、獲物を待つため、茂みに身を隠した。
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