第3話 危機
「フゥ……スッキリしたー」
やぁ、僕の名前は
まぁ、ここまでどうだっていい。どこにでもいる男子高校生の日常の一幕だ。しかし、ここから一つ大きな問題が僕に襲いかかる。
「……紙、無いなぁ」
そう、紙が無い。いくら紙を求めて右手を動かしても僕の右手は薄い茶色い筒をクルクルと回すだけだ。カラコロと呑気な音が狭い個室に響いている。
さて、どうしたものか。幸いここは学校のトイレだからいつか人は来る。その時に外からトイレットペーパーを投げ入れて貰えば解決だ。しかし、この解決策には一つ問題がある。
「おい早く済ませろよ!次の授業、厳谷先生(体育担当の先生。昔からこの学校にいる先生で価値観が昭和で止まっている。しかし、昔からいるだけに学校での力が強く誰も彼を止められない。生徒の指導は恫喝と暴力で行う)だぞ!」
「わかってるてぇ〜」
さぁ、降臨したぞ!2人のメシアが!いけ木々衣発、己のSOSを力の限りに!
「あ、あの〜……す、すみマセン……」
「なぁ、今なんか聞こえなかったか?」
「はぁ!?知るかよ気のせいだろ!それより急ぐぞ!マジ殺されるから!」
そう、僕はコミュ障だ。声からしてさっきのは同じクラスの陽キャ二人組。とてもじゃないが話しかけられない。やはり今回の授業はサボって次の休み時間に賭けるしかないか……!
くそ、せめて僕の数少ない友達のアイツが来てくれれば!同じクラスでも有り難さに天と地ほど差が……
……ん?さっきの2人は同じクラス……ってことは、僕の次の授業は彼らと同じということで……
「おい早く済ませろよ!次の授業、厳谷先生だぞ!」
ふむ、なるほどなるほど。
「………………爪は、伸びてるな……」
「あ、木々衣!ギリギリじゃん!何してた……ってお前ケ」
「なぁ友よ。お前はイースターやハロウィンに卵やミカンに絵を描いたことはあるかい?」
「ん?確か幼稚園くらいの時にやった気がするけど……ていうかお前ケツなんか赤」
「そうか、その後その殻や皮の中身は食べるよな。お前はその中身を汚いと思うか?」
「いや、そりゃ中身は別に汚くないと思うけど……だからお前ケツ」
「そうかそうか……フッ、それなら良かった」
「はぁ?さっきから何言って……?」
「……今の僕はキレイだってことさ」
そう言って僕は笑う。足元をケツから流れる血で染めながら。
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