会議終了

「誠翔!?何でここに居るの!?」


隣にいる雲雀が突然現れた俺に驚きながらここに来た理由を聞く。


「正直半分くらい俺も分からん。でも今はそんな事より会議だ。現状を教えてくれ」

「分かった。簡単にまとめるとね…」


そして俺は雲雀から現状どのような状況になっているかを聞いた。


「なるほどな…」


雲雀から聞いた話はこうだった。運動部で使える合計の予算は限られており、どの部活も少しでも多くの予算をもらい新しい機材や遠征のお金に使いたい。予算の分割について前回多く多めに予算を勝ち取った部活はそのまま、逆に少なかった部活は今度は自分たちが多めにもらわなくては不公平だという意見だった。その不満からだんだんヒートアップし予算の話だけではなく体育館の使用頻度の優劣や部室の不満など様々な事での口論に発展してしまったようだ。そして会議が始まる前からこのありさまのため会議はまだ始まってすらいないという。


今現在も雲雀から話を聞いている間も口論が飛び交っている。スゴイ口論の激しさだ。口論に参加していない真波の顔色が悪い。参加を嫌がっていたのも納得だ。


「なんか半分くらい関係ない理由で口論になってるな」

「私の力不足で…頑張って収めようとしたり話を続けようとしたんだけどどうにもできなかった」

「とりあえず話を続けるためにいったん話を聞いてもらわなきゃな」

「でもどうやったら聞いてもらえるんだろう。静かにしてもらうことをを促してもこれは運動部の問題だからって言われてさ」

「やっぱ1年生だからなめられてるところもあるんだろうな。こういうのは正面から突破しようとしても無理だからな。まぁここは俺に任せて」


そして俺は口論の真ん中に行く。俺が前に立っても口論が止む気配は無い。こういう場合は雲雀みたいに正面からお願いしても無理だ。先ほども言ったが1年だからなめられているという事もあるだろうし。しかしやりようによってはいくらでも黙らせることは出来る。今俺が思いつく一番効果がありそうな方法を使わせてもらおう。


俺は少し多く息を吸い込み大きく声を張る。


「静粛にお願いします。5秒以内に声を収めていただけなかった場合金城生徒会長に会議の進行妨害並びに予算を多く割くべきではない部活であると報告し、予算の削減をするよう通達させていただきます」


その発言をした瞬間に収めるのは不可能だろうと思われていた罵詈雑言の嵐が止んだ。…名前を出しただけでこの有り様。あの生徒会長どれだけ恐ろしいんだ。


「会議進行のご協力ありがとうございます。ではこれより会議を始めさせていただきます。会議の進行は空先が進行させていただきます。会議の進行をスムーズに行うため発言を許可した時間以外の発言は禁止とさせていただきます」


そして俺は雲雀にアイコンタクトをする。意図を察した雲雀は進行を始める。


「それではこれより会議を始めさていただきます」


そして雲雀は各部活の部長に希望予算額を聞き始めた。陸部などの一部を除き、どの部活も公平に分けられる予算よりも高い予算を希望している。


「続いてその予算を具体的に何に使用するのかを聞かせていただきます」


何に使用するかは真波から聞いていた通り新しい用具や遠征費に使いたいというものが多数だった。


雲雀が聞いた内容をノートに筆記している間も言い争いこそなくなった無くなったがまだピリピリとした空気が続いている。


俺は雲雀と小さな声でこれからの進行についてやり取りする。


「どうする雲雀さん、さっきの忠告のおかげで進行さえ出来てるけど予算決定の時間になったら多分時間だけ食って結局決まらないよな」

「そうだね。正直なこと言うと絶対全部の部活が満足するって言うのは叶わないと思う」

「だよなぁ。じゃあこれから俺たちのやることはいかに満足してもらうかじゃなくていかに穏便に会議を終了させられるかだな。雲雀さんはそうすればいいと思う?」

「私個人の意見としてはやっぱりどの部活にも予算を分けたいけど生徒会の一員としてはやっぱり学校の人気を出すためにも好成績を残せそうな部活に割くべきかな?でもそれもやっぱり選ばれなかった部活は納得しないだろうし」


二人してう~んと頭を悩ませる。


「予算が増えてくれればいいんだけどな~。でも仕事とかと違って頑張ってお金がもらえるわけでもないし」

「頑張ってお金がもらえる…あっ」


俺はその言葉と共に金城生徒会長の言葉を思い出す。


(この学校、そして私は結果を残す人間への投資は厭わないわ。実際学校は茂木や不知火、水無月を含めた生徒会メンバーの協力もあり学校は生徒会への予算を増やしたわ)


「雲雀さんの言ってくれたことのおかげで多分話解決できる、ただちょっと荒れるかも。ちょっと耳貸して」


そして俺は雲雀に俺の考えを伝える。


「こんな感じの案なんだけど大丈夫か?」

「勿論大丈!誠翔の事信用してるから」

「分かった。もしひどくなったら一緒に喫茶店行って美味しいパフェでも食って忘れようぜ」


そして俺は部活の部長達に向けて話をする。


「皆さんに伺いたいことがあります。皆さんは多くの予算を割いていただきたいという事は、それに見合った成績を残していただけるという事で問題ありませんね?」


どの部活動もその発言に肯定の意思を伝えてくる。


「分かりました。ではこういうのはどうでしょうか?初めに陸上部をはじめとした公平に分けられる予算よりも低い予算を希望している部活はその希望している予算を割り当てます。そして残った予算を割り当てられた部活以外で公平に分けます」


この発言と同時に一気に不満そうな雰囲気が募る。


「その予算では希望予算に達していないという事を十分理解しています。なのでこのような案はどうでしょう。もうすぐ始まる大会。その大会でいい成績を残した部活動が次回予算を今回よりも多くもらえる、逆に悪い成績だった部活は予算を今回よりも少なくなる。と言うのはどうでしょうか?質問があれば挙手をお願いします」


質問を募集すると幾つかの部活動が手を挙げる。


「仮にみんな1位や2位の好成績を残した場合はどうなるんだ?」

「その場合は勿論1位を取った部活の方が予算を割くべきだと判断し2位の予算の割合を減らし、1位の予算の割合を増やします」

「じゃあみんな1位だったらだったら?」

「現状維持でも大丈夫だと判断し、予算の増減は行いません。少なくとも試合に負けられない理由が増えてより練習や本番に身が入るのではないでしょうか?」

「だったらこれからも少ない時もあるけど多くもらえるときもある前からの方がいい気がするな」

「勿論その言い分も分かります。安心してください。メリットもあります。仮に全員が1位や2位の好成績を残した場合学校から部活動への予算が恐らく増やされます。実際生徒会は学校に貢献し予算が増やされたという例もあります。部活は生徒会より成績が分かりやすいので、結果が残された場合ほぼ確実に予算は増やされるでしょう。予算が増えれば仮に公平に分けた場合でも各部活の要望する予算に達する事も出来ると考えます。私は要望する予算に達するどころか更に予算を増やせるとも考えます。そのたくさん予算がある状態で他の部活に差をつける、もしくはつけられた場合の予算の差は…まぁ今これを考えても仕方がないですね」


俺が話を終えると各部活の部長がその案について考え始める。しかし、考えている時点でこの勝負は決まったような物だ。もし否定的な考えを持っている場合はすぐに却下するだろう。それはこの短い時間しかまだ話していないが分かる。何故ならどの部活も自分達に自信があるため負けるつもりなど更々ない。何なら今までの不確定な予算分割と違い予算を実力で勝ち取れるチャンスを逃す手はないだろう。


各部活の部長の考えがまとまるのを待ち、約1分後雲雀が声を上げた。


「それでは今の案に賛同できない部活動代表者は挙手をお願いします」


10秒ほど待ったが誰も挙手はしなかった。


「異論はありませんね?それでは今回の予算の分割は以上の方法で行いたいと思います。これで今回の会議を終了します」


そして今回の部活動間予算会議の幕が閉じられた。

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