第42話 希望の教室と、途切れない絆
武装勢力のリーダーが拘束され、残党が解体されたことで、ナブア紛争地帯にはつかの間の平穏が訪れた。陽菜、ラシード、ムスタファ医師のチームは、すぐに**「希望の教室」**の本格的な再建に取り掛かった。
地元の長老たちや教師経験者たちが、陽菜の提唱する**「倫理と知恵」を軸とした教育カリキュラムを基に、子どもたちへの授業を開始した。破壊された瓦礫の山は、子どもたちの未来への夢**を描く学びの場へと姿を変えた。
ムスタファ医師の野外病院も、陽菜が確立した透明なルートからの安定した医療品供給により、地域の恒久的な医療施設へと移行する準備が進められていた。医療格差の解消へ向け、地域が一歩を踏み出した瞬間だった。
陽菜は、一連の作戦の成功を東城隼人に報告した。
「東城さん。これでナブアの緊急課題は、ひとまず解決よ。闇市場の破壊、教育の再建、そして武装勢力の思想的な敗北。すべて、あなたの情報戦のおかげよ」
東城は静かに答えた。
「あなたの行動する勇気と、現場での人を思う前向きな心が、私にデータを使う真の目的を与えてくれました。私はただ、その光を拡散させただけです。次は、再び国際開発銀行との会議ですね。ナブアの成功例を武器に、資源開発の倫理を追求しましょう」
陽菜は、ラシードとムスタファ医師と共に、再建されたばかりの教室の様子を見守っていた。子どもたちが笑い声を上げながら、新しいノートに平和と未来の絵を描いている姿があった。
「ホシノ、お前は本当に、この地域の光の連鎖を創った」ラシードは感極まった様子で言った。「お前の叫びは、俺たちに行動する勇気を与え、俺たちはその勇気で、子どもたちの感動を取り戻した」
陽菜は、ラシードとムスタファ医師に深く感謝した。
「いいえ、ラシード。あなたたちこそが、私の戦いの真の現場であり、力の源よ。私の倫理は、あなたたちの犠牲と希望に基づいている」
その時、陽菜は、ラシードの腕に巻かれた包帯を見て、彼の命懸けの行動を思い出した。彼の絆と忠誠は、陽菜の戦いを支える最も強固な基盤だった。
しかし、陽菜の戦いに終わりはない。ナブアの成功は、世界の他の貧困地域にとっての**「希望のモデル」となったと同時に、彼女を疎ましく思う闇の勢力にとって、「排除すべき脅威」**となった。
陽菜は、次の国際会議へ向かうため、ナブアを離れる準備を始めた。彼女の心は、次に立ち向かう資源開発の倫理という、より巨大で冷徹な構造的課題へと向かっていた。
彼女が築いた「光の連鎖」を世界中に広げるため、陽菜の**「叫び」**は、新たな地平線を目指して、再び響き渡る。
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