第24話 奇才の子はオタク
12月4日 午後15時33分
王国『パラティーヌ』
ロスペン侯爵家・エドガーの部屋
寝ていたエドガーの目が覚めた。上半身を起き上がらせながら、左腕を見る。
管がさされており、繋がっている点滴袋からエドガーの体へ液体を耐えずおくっていた。
「俺……確か、掃除するって……そして……」
倒れる前の記憶を呼び起こしていると、扉が開く音が耳に入ってきた。
「あっ。エドガーくん、起きたんだね」
部屋に入ってきたのは、聖女様であるシオン。彼女はお粥が入った皿が載っているトレイを持っていた。
「聖女様……? なんで、ここに……」
「なんでここにって……、エドガーくんが倒れたからいるの。寝不足で、持病の発作が出て倒れてたでしょ?」
シオンに図星を付かれてしまい、エドガーは言葉にならない悲鳴をあげる。
「ヴッ。そ、それは……その……」
言い訳が出来ず、目を泳がしているエドガーの膝元に、シオンはトレイを置いた。
そして彼女自身は、近くにあった椅子を持ってきて座った。
「これ、トキさんが作ってくれたミルク粥」
「あ、ありがとう……」
エドガーは義心地ない言葉でお礼を述べ、スプーンを手にしてミルク粥を一口食べる。
「美味しい……。懐かしいな……」
「懐かしい?」
シオンの疑問に、ミルク粥を食べ進めながらエドガーは頷いた。
「そう。昔さ、俺よく発作を起こして…ベッドの上で過ごしてたんだ。読書とか文字を書くのは、ベッドの上で出来たけど……」
「外に出たり、歩いたりは出来なかった。でも、トキ兄さんが良くミルク粥を作って、振る舞っていたんだよね」
「『体の消化に良い料理で、子供のエドガーが好きな味』だってね」
何かを懐かしむように、エドガーはそう言い、ミルク粥を食べ進めた。
「そうだったんだね。良いお兄さんで良かったね」
「いや? 俺はそう思わないよ。だって、トキ兄さんは元から良い人だし? カッコ良くて、魔法も上手な優しい人だし」
ーーーーーーーーーー
「でさ、エドガーくん。どうして…、持病の発作が出るまで、寝てなかったの?」
ミルク粥を食べていたエドガーへ、シオンは最大の疑問を投げ掛けた。
だが、エドガーは気まずそうに目をそらし、ゴモゴモと話し始めた。
「…………かったから…………」
「え? エドガーくん、なんて?」
耳をこちら側へ向けるシオンに恥ずかしさが爆発したのか、顔を真っ赤にしながらエドガーは口を開いた。
「新刊で出てきた新しい研究結果とかが、面白かったから!!」
「は……? え……?」
驚きのあまり唖然としてしまうシオン。
「え……? 新刊? 新しい研究結果?」
「そうだよ! その証拠見せてあげる……」
そう言ったエドガーは、魔法で一冊の本を本棚から手元に持ってくる。
「これ『古代魔術記号論』って言うヤツでさ、グラウンドさんから持った新刊の一つなんだけど……これさ、前までは研究されてなかった仮説を、今回研究して、その結果とかが書いてあって……」
めくったページをシオンに見せながら、話を続けるエドガー。
「それにさ、前回解読されてなかった古代に用いられた記号の分の解読もされててさ……それと、それと……」
エドガーはまた別の本を二冊、魔法で本棚から手元に持ってこさせ、二冊目の本のページをめくって、シオンに見せた。
「この本は『魔力統計学』。自然界にも、魔力があるんだけど……最近の研究で、時間帯ごとに自然の魔力が僅かにだけど……変わるって分かったんだ。それに……」
二冊目の本を置き、エドガーは三冊目の本を手に取る。
「これは『魔導物理学』。魔法と物理って合わないと思うけど、実は似てると思ってる。魔法は魔力を使うけど……その一言じゃ表せないほど、魔法ってすごいんだ! それと……」
意気揚々と話しているエドガーは、止まらなかった。
(うわぁ…
シオンはただ、苦笑いを浮かべるしか出来なかった。
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