第8話 食卓を囲むのは
11月26日 午後19時35分
王国『パラティーヌ』
ロスペン侯爵家・ダイニングルームにて。
「聖女様。さぁ、こちらへ」
トキに連れられ、ダイニングルームに来たシオン。彼の案内の元、長いテーブルの端の椅子に腰かける。
目の前ある皿には、ステーキ、茹で野菜のサラダに、湯気がたっているスープにパン。
(ご、豪勢だ…)
目の前に映る光景にドン引きしていると、アクレリアが尋ねてくる。
「聖女さま?どうかなさいましたか?」
「え?あ、大丈夫です…。なんか…多いなぁって……」
「左様ですか…。もし、料理が足りないと感じましたら、いつでもお申し付けください。」
「あ、はい。分かりました……」
(このままだと…これ、太りそうだな……)
なぜか、危機感を覚えたシオンであった。
ーーーーーーーーーー
ダイニングルームには、食器とナイフやフォークが当たる音だけが響き渡っていた。
無言で食事をしていたアクレリアは、フォークをテーブルに置き、突然口を開き始める。
「聖女様、先に謝らせてください。うちの弟が……エドガーが大変、無礼な行動を取ってしまい、申し訳ございません」
謝罪する姉を横目で見ていたエドガーは、「別に、成功したから良いんじゃん」とそっぽを向く。
「エドガー、貴方は黙っていなさい。聖女様、この度は大変申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げるアクレリアに対し、シオンは慌て始めた。
「か、顔をあげてください!まぁ…私はいつか召喚される未来でしたし、それが早まったってだけで、別に…こっち側に迷惑掛かった!とか言ってもないし、思ってもないので…。これに関しては…もう不可抗力っていうか…なんというか…」
アクレリアは顔をあげる。
「聖女様はお優しいのですね」
「いや、私が優しいと言うか…。もう、これは不可抗力です!! あ、そう言えば…名前聞いてなかった……」
シオンの言葉を聞いたアレクリアは、自己紹介を始めた。
「聖女さま。私は、アレクリアと申します」
「あ、シオンです。よろしくお願いします……」
なぜか、突然に始まった自己紹介。互いの名前が知れたから、良いだろうと、シオンは心のなかでそう思ったのであった。
ーーーーーーーーーー
11月26日 午後20時53分
王国『パラティーヌ』
ロスペン侯爵家・廊下にて。
夕食も終わり、侍女に案内されたお風呂で一息ついたシオンは、侍女と共に部屋へと向かっていた。
(気持ち良かった…。あんなに大きい浴槽があるとは…お金持ちはスゴいな…)
心の中で感想を言いながら歩いていると、前からある人物が歩いてくる。
レンガ色の髪の毛に、仕立ての良いシャツに、サスペンダー。そして、黒いズボンと言う軽装姿の少年、夕食の時にアクレリアに怒られていたエドガーだった。
「え、えーと…君は…さっき、アクレリアさんに怒られていたエドガー…くんだったよね」
「うわっ、なんでそんな覚え方してんの……」
立ち止まって早々、嫌な顔でそう言葉を返すエドガーだったが、「いや、まぁ…妥当か」と呟く。
「俺が勝手に、しかも興味本意で召喚したちゃったし、無理もないか」
「そんなの…気にしなくて良いって言ったよ!私は元々、召喚される予定だったし…それが早まっただけだよ。まぁ…知らないけど……」
「それ、姉貴も言ってたな…。元々、召喚する前に、16歳になった聖女に手紙を送るらしい。召喚するよって言う合図の手紙。それを見た数日後くらいに、聖女は、自身の体に眠っていた『聖女の力』を発現する。で、こちら側に召喚されるって感じだったような……」
頭を悩ませながらそう話すエドガーに、シオンは頷いていた。
(なるほど…、勝手に『聖女の力』は発言しないのか…、異世界からくる手紙を見て初めて、力が発言するのか……)
(てことは…、私が発現したのって…召喚されたから?それしか『原因』ないしな……)
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