第5話 推薦状を出した彼女たちとは
ついに――入学試験当日を迎えた。
寝坊なんてせず、シャキッと早起きした俺は窓の外を眺めていた。
「いい天気で絶好の試験日和だな。……って、まあ室内での試験だし、関係なんだけどなっ」
自分で言って、自分でツッコむ。
でも、やっぱり晴れていた方が気分はいいし、気合は入るよな!
今朝は素振りでなく、軽くランニングをして、朝ごはんもしっかり食べて、身体の調子を整える。
この日のために新調した服を着て……。
「よし、行くか!」
胸を張って王立学園カルリーネへ向かった。
事前の書類選考でかなりの足切りがあると聞いていたが、それでも……。
「おお……やっぱり人が多いなぁ」
会場に入った瞬間、あまりの人の多さに思わず、口から漏れた。
今の時点でもざっと、200人は悠に超えている。
さすが、名門校は伊達じゃないな。
受験者の服装もさまざまである。
中等部から学園に通っている制服組もいれば、高級生地で作られた服を身に纏った貴族っぽい連中もいる。
共通することといえば……全員が真剣な表情をしている。
余裕ぶっている人なんて、1人もいない。
実力者であることは間違いないな。
改めて、競争倍率が高いことを実感した。
そんな中で……女子の姿は見当たらない。
この場にいる全員、男しかいないのだ。
一見、男子校かと錯覚してしまいそうだが……王立学園は男女共同校である。
むしろ、国内でも女子の在籍がかなり多いとされている。
そして、数少ない女子たちは、別日に既に試験が終わっているので、ここにはいないのだ。
といっても、女子であるなら結果は間違いなく、『合格』であるだろう。
理由なんて、女子であることだけで納得できる。
他の男たちだって察していることだ。
それでも、その優遇に誰も文句は言わない。
言える空気でもない。
この男女比3:1の世界ならではであるな。
◆◆
試験開始時刻になり、試験内容が説明された。
内容は主に3つ。
筆記・実技・面接である。
筆記試験は、事前に対策していた問題が結構出てきて……手応えあり。
合格ラインギリギリぐらいの。
実技試験は、受験者同士での組み打ちで剣術のレベルを見るものだったり。
魔力量や操作能力を見るために、的に魔法を当てるというものであった。
木刀での打ち込みは、慣れたものだ。
魔法だって……。
「《ファイヤーボール》」
俺の番になり、目の前の的ぐらいのサイズの炎の玉をぶつけてたところ……。
「な、なんだアイツ!」
「男であんなちゃんとした魔法を使えるなんてっ!」
「魔力量が多いのか!? 珍しいなっ!」
試験官だけでなく、周りの男たちのどよめきも広がりつつあった。
ちらっと周りを見れば……。
「《ファイヤーボア》」
「《ウィンド》」
受験者たちは真剣な顔つきで魔法を唱えている。
しかしながら、放たれたものは……ピンポン玉サイズの火や球体やよそ風ぐらいの威力など……魔力量が少なく、操作にも慣れていないことが分かる。
そんな中での俺なのだ。
そりゃ、目立つよな。
でも、合格したいのでここはアピールチャンス。
目立つとしても、結果を出した方がいいと思った。
まあでも、驚いている周りだが……あくまで男子の中では上ってこと。
結局は、生まれつき魔力が多い女子たちには、到底敵わないって認識だろう。
俺が【無限魔力】であることはバレていないはずだ。
そして、最後の面接も強面なおじさんが多い中で、ハキハキとした声で受け答えができた。
「ありがとうございます。では、最後に聞きたいことはありますか?」
『学園長』のプレートが置かれた中央の席に座る、綺麗な女性がそう告げた。
こんなにも若々しくて綺麗な人が学園長で驚きだし、おっぱいも大きくて素晴らしい。
と……思考を切り替えて。
前世の高校受験の面接だと「御校に入りたい気持ちは誰にも負けません!」と、アピールとばかりに言うのが定番だった。
今回もそれを言いつつも……。
俺は、どうしても気になっていることがあった。
だから、思い切って聞いてみることにした。
「御校を受けようと決めたのは、やはり推薦状があったからです。そして、そこに記載してあった入学を薦める3通の推薦状があったおかげで、ここまで進むことができたと思います。ですので、その推薦状を出した方々が誰なのか……教えていただくことは可能でしょうか?」
てっきり、面接中に言われるものだと思っていたが……推薦状のことは全く触れられなかったのだ。
時間も限られているし、他の受験者たちと同じように進めるためにも、あえて省略しているのかなと思っていたけど……やっぱり気になる。
知ってどうするのかといえば、お礼だって言いたいし、どんな理由で俺を推薦したのかも知りたい。
すると、学園長は少し眉を寄せて口を開いた。
「推薦状を出した人物を教えることは可能です。ただ……今はまだ、教えることはできません」
「そ、そうなんですね……」
今はまだ、か。
何か事情があるとかかな?
俺が試験に合格しない可能性も考慮してとか……?
「それに、推薦状を出した彼女たちからも、その件については直接伝えたいという要望もありましたので……。貴方を指名する推薦状が3通届いていたことは事実ですが、この場ではそれ以上のことは申し上げることができません。非常に気になるところではあると思いますが……」
「い、いえ……。ありがとうございました!」
これ以上は深掘りしちゃいけない雰囲気を察して、俺は話を切り上げる。
そうして面接試験も終えて、待機教室に向かう。
緊張もほぐれてきて……ふと、最後の学園長の言葉を振り返る。
そんで……気になることがまた増えた。
「誰っていうのは分からなかったけど……推薦状を出した彼女たちって、言ったよな? 聞き間違いじゃないよな?」
男のことを彼女と呼ぶはずがない。
それに、推薦状はタダで出せるものだが……。
推薦状として学園に通すのは、それなりに地位のある人物じゃないと無理じゃないかなと思っていた。
ましてや、学園側からわざわざ推薦状を出さざるを得ない……無視できないほどの地位の高い人物。
ということは、俺をこの学園に推薦したのって、数少ない女性側ってこと?
え……なんで??
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