プロローグの文体がとても美しい。名を持たぬ「私」という意識が、灰に覆われた世界を漂いながら、ひとつの命の誕生を見守る——その語りが詩のようで、静かに引き込まれる。「あなたが生きるたびに、私は呼吸を取り戻す」という一節に、この物語全体を貫くテーマが凝縮されている。
第1話「灰の中の灯」の出産シーンが圧巻だ。長く季節を失った灰の世界、二十数名まで減った集落シトラ——絶望的な状況の中で、村長シゲルの「神よ、まだ私たちを見捨ててはいないのか」という呟きが痛切に響く。そして奇跡のように風が止み、雲の切れ間から光が差し込み、産声が響く場面の静けさと感動。「奇跡の子」ハルの誕生が、灰色の世界にほんの少しの温もりをもたらす様子が丁寧に描かれている。
叙情的な文体と、生きることの意味を問う物語のテーマが見事に調和した第1話だった。