第15話 我儘

「あっ、そうだ一つ言っておくことがあって......」


 チェーロは言いづらそうに口を開く。


「私特に護衛とか求めてないので、どこに行くにもついてくるとかしなくていいですからね」


 それは護衛として集まった者たちには酷なお願い。

 しかし、彼女は本当に自分の護衛を求めてなどいない。クラウから自分の立場を考えろと言われたけれどそんなことは気にしない。

 護衛がついて自分の行動が制限されるぐらいなら先に、ついてこなくてもいいという旨を伝えておきたかったのだ。


「でもオレたちはチェーロの護衛として決められたんだぜ?」

「それは私に相談もなく決められたから。私としては自分の身は自分で守れるからいいんだ」


 彼女は相談もなく決められたことに対して素直に従う気はないと言いたいのだ。

 

「をう言うなら納得させてみせろ。俺たちは聖女の護衛っていう役割がある。まあ、分かりやすく言うとチェーロ......お前を守るって役割がな。それは王様から決められてんだよ。勝手に変えるこたできねえ」


 ストームが冷静にチェーロに言う。

 根拠もないのに護衛がいらないからとだけ言われても、納得することはできない。だから納得させることをしてみせろということだ。

 しかし、どのようにして納得させればいいのか分からない。


(納得させろってなにをすればいいんだか......護衛がいらないという証明?それってどうすればいいんだ?こういうこと前もあったなあ。まあ、あの時は組長だったからだけど。自由にしたい時は全力で振り切ったから別に気にしてなかったけどね)


「なにをしたら私に護衛はいらないと判断してくれるの?」

「それは......」


 どうやらストームも方法は考えていなかったようで返事がない。

 そんな時、クラウが


「戦ってみれば?一番手っ取り早いでしょ」


 と言う。

 チェーロがストームと戦い力を示すことができれば、自分より弱い者に守ってもらう必要はないと証明することができる。

 彼はそう考えたのだ。


(たしかにそれが一番手っ取り早い。私が強いことが分かればある程度の行動は制限されずに済むだろうからね。幸い、前での戦闘スキルはそのままだし、ソルさんところで鍛えてもらっている分少しは対等に戦えるはずだ)


「そうですね、ということで......ストーム、あなたに対戦を申し込みます」

「は?いやいくらなんでも体格差があるだろ」

「あれ、負けるのが怖いのかい?一応君はこの隊の隊長のはずでしょ?守る対象に負けるのを恐れてなにになるんだい?」


 戦うのを断ろうとするストームにクラウが言った。


(なんて分かりやすい煽りなんだか......まあ、彼なら確実にこの煽りに乗ってくるだろうな。そういう人だと知っていてクラウも煽ったのだろうから。というか、隊長だったんだな。いや、最初の問いかけに反応したのが彼だったから薄々気づいてはいたのだけれどね)


「あーもう、やればいいんだろやれば!じゃあ審判はレインな。危なくなったらぜってえ止めろよ!!」


 ストームがレインを見て勢いよく言う。

 レインは


「もちろん!任せとけよ!」


 と笑って答える。

 こうしてチェーロとストームが戦うこととなった。

 計画通りだと、クラウとチェーロは目を合わせ微笑んだ。


(似ているからとかじゃない。私はこの人には負けたくない。なにより自分の平穏を手にするためだ!)

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