第12話 雑談

「君は組のでしょう」

「俺だってなりたくてなったわけじゃ......って、最終的には自分で決めたんだけど。だからって、組のみんなのってわけじゃないから!!」


 チェーロは反論する。

 自分の意志で組を継いだ。だから、傀儡人形などではない。それなら、組のものというのもおかしな話だ。


「でも君組のみんなのこと好きでしょ」


 クラウはすかさずチェーロに言った。

 普段の様子から感じ取っていたのだ。前の出来事ではあるのだが空は、幹部のみんなといる時が特に笑っていた。そのことを忘れることはない。

 

「そ、そうですけど......それとこれとは別です!私はクラウのでもないしネビアのものじゃない!」


 再び大きな声で反論して手を振り上げる。

 しかしその手はネビアに掴まれた。


「君は今の自分の姿に自覚を持ったらいかがですか?」

「これでもソルさんとこで修行したし!」


 彼女は強くなるためにソルのところで修業を続けている。

 ソルからも随分強くなったとお墨付きだ。

 しかし、いくら強くなったといっても全盛期の空には程遠い。

 

「ソルって誰?」

「私の師匠です!すごい強いんですよ!」


 チェーロはニコニコと笑って言う。

 それに対して二人がどんな顔をしたかも知らずに。

 嫉妬をはらんだ顔。二人の顔はそんな表情だった。


「ちょっとどういうことですかまたなんか邪魔者いるみたいじゃないですか」

「知らないよ。僕だって今日会ったばかりだし。というかあの子にすごい強いとか言われるのは僕だけでいい」


 二人はチェーロに聞こえないように話をする。

 自分の預かり知らないところでチェーロと仲良くなっている人がいるということに嫉妬しているのだ。


「二人して内緒話ですか?仲良くなったんですね良かった!!本当に!屋敷壊すし人の話聞かないしどれだけ苦労させられたことか!」


 内緒話をしているということから彼女は二人が仲良くなったのだと推測した。

 苦労させられたことを思い出して少し涙目になった。

 

(この二人は目合わせるだけで喧嘩とかあったからなあ。まあ、なんか喧嘩終わってから話してたけど。でも仲良くなったのならなによりだ)


「それはすみませんでした......」

「え、明日雨降る?」

「ちょっと僕が謝ったらなんでそうなるんですか?!」

「ナスが謝るとかめったにないからでしょ」

「さっすがクラウ私の言いたいこと分かってますね!」


 屋敷を壊した時にもまともな謝罪がなかったのに急に謝られたら明日の天候もしてしまう。という考えがチェーロの中にあった。

 

「チェーロさんもクラウくんもひどいです......」


 二人の言葉にネビアはいじける。


「ごめんって......」


 いじけてしゃがんでいるネビアの頭をチェーロが撫でると、彼は立ち上がった。


「急に立ち上がるとびっくりするからやめて」

「今の君に撫でられる方が嫌ですよ」

「前は嫌がってなかったのに......」


 チェーロは前ではネビアが疲れている時とかにはよく頭を撫でていた。

 その時には嫌がっている様子はなかったのだ。

 しかしネビアは今の彼女に撫でられることを嫌がった。その理由は彼だけ知っていればいいだろう。


「二人でなんか楽しくしてるところ悪いけど、チェーロが言った通りそのうち雨かもね。父が言ってたんだけど、聖女の護衛騎士団を作ったらしいよ」

「それと雨にどんな関係が?」

「......君、自分の親友のこと忘れたわけ?」


 クラウのその言葉にチェーロは少し考えてから


「あ、ええええ?!」


 と、大きな声を上げたのだった。

 

(確かに私の親友は雨だ。全てを洗い流してくれる私の雨。大切で巻き込んだことを何度も後悔した。彼は自分の意志でついてきてくれたのだけどね)


「あ、記憶はないよ。でも姿変わらないからすぐに分かると思う」

「ああ彼ですか。騎士団試験受けてたんですね」

「護衛騎士にはぴったりでしょ。一応僕も関わったから推薦しておいたんだよ」


 驚いているチェーロをよそに二人は話を続ける。

 親友は剣道をしていたこともあり刀の扱いが得意だった。

 空が悲しむからと血を流すことはしなかったのだが。


「というか私の護衛っているんですね......そういう堅苦しいのはちょっとなあ......」

「常に幹部連れていた人がなに言ってるんですか?」

「君の今の立場で護衛いらないわけないんだから受け入れな」

「うう......はい......」


 二人に諭されたので彼女は受け入れることにした。

 今の自分の立場と、力の弱さを。


(もっと強くなって自由に生きてやるぞー!)

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