5章 目標に向かって 5-1
※お知らせ
いつも作品を読んでくださり、ありがとうございます。先日「土日更新」とお伝えしましたが、より安定してお届けするために、更新日を《水曜+日曜》の週2回に変更させていただきます。度重なる更新変更で申し訳ないですが、今後もこの作品をよろしくお願いします。
次の日の放課後、駿はもうすぐ行われる地区大会に向けて練習をしていた。
自分の番の球出し練習が終わると、球拾いをしている隆二に声をかける。
「球拾いお疲れ」
「代表メンバーに選ばれなかったからしょうがない。そっちも球出し練習お疲れ、今江先生が球出していたから、相当きつかっただろ?」
「ほんときつかった。悪いけど、この後の祐希との練習変わってくれない?ちょっと休憩したい」
「分かった」
「少しの間、頼んだ」
そう言って、学校の玄関へと向かい、玄関で上履きに履き替え、いつも使ってる部活の時に使うトイレに向かおうとしたが、体育館からバトミントンの羽根を打つ音が聞こえ、胸がざわつき、自然と足が体育館にある方のトイレへと向かった。
体育館に入ると、手前でバドミントン部、奥でバスケットボール部が練習しており、見ているだけで、熱気が伝わってくる。
練習の邪魔にならないように体育館に脇を素早く移動しながら、果奈の事を探しつつ中にあるトイレに向かう。
「パン!」
その時、バドミントンコートの方からスマッシュを放つ音が聞こえた。
音が鳴った方向を見てみると、そこには果奈の姿があった。
試合をやっているみたいで、スコアを見た感じ、果奈が相手を圧倒しており、個人で県大会に行ってるだけあって、凄いなと感じる。
果奈は中学校の時、個人で県大会のベスト8行く程の実力を持っており、今でも市内大会などの個人戦でシードとして出場していた。
(日常での果奈をずっと見てきたから、部活に励む果奈って何か新鮮だな〜俺も果奈の居る場所に張り合えるように、頑張らないと)
そんな事を思いながら、つい立ち止まって、試合を見てしまっていた。
「すみません、ここに居るとボールが飛んできて当たってしまうかもしれないので、移動してくれませんか」
「あっ、ごめんなさい」
バスケットボール部のマネージャーに注意されて、トイレに急いで向かう。
トイレを終わらせると、さっき注意された事もあり、トイレからすぐ近くにある扉から出て、校舎を通り、玄関へと辿り着く。
靴を履き替えてコートに戻ると、隆二と祐希がラリー練習をしており、自分に気付いた隆二がキリの良いところでラリーを辞めて、近づいてくる。
「浅村、戻ってくるの遅かったけど何かあったのか?」
「うんうん、何にもない」
果奈の練習風景を見ていて、遅くなったとでも言ったら、隆二に怒られそうなので、何も無かったと、嘘をついた。
そして、隆二と入れ替わるようにして、再び練習へと戻る。
しばらく練習して、模擬戦となり、ラリー相手をしていた祐希と戦う事になった。
「浅村先輩、宜しくお願いします」
「こちらこそ、宜しく」
そう挨拶を交わした後、試合が始まる。
試合は序盤から一進一退の攻防が繰り広げられていた。
祐希にゲームを取られる事もあったが、その度にさっき見た果奈が奮闘する光景を思い浮かべ、それに負けてられないという精一杯の思いで、必死にプレーしていると、気付いたら、後1ゲームを取れば、勝利するところまで来ていた。
次のゲームになると、追い込まれた祐希がギアを上げ、更に一進一退の攻防が激化し、デュースに突入しても、しばらく続いた。
なんとか、マッチポイントを取り、サーブから攻め立てると、祐希から甘いボールが返ってきて、それを打ち抜く。
祐希も取ろうと、腕を伸ばしたが、ギリギリで届かず、試合を制した。
初めて祐希に勝ったが、嬉しさ以上に勝てた事への驚きが襲ってくる。
「浅村先輩、最後のショット、ナイスコースでした」
「ありがとう。でも、今まで祐希に勝った事無かったから、今日勝てたのはたまたまだよ」
「そんな事無いですって、今日の浅村先輩は代表戦の時よりも凄かったです。もしかして、さっき長い時間抜けた時に好きな人でも見て、英気を養ってたんですか?」
「ちょ、ちょっとトイレが長引いただけだよ…」
心当たりがありすぎる祐希の言葉に、驚きを隠せないまま反応してしまう。
たまたまそのやりとりを隆二が近くで聞いており、自分に見えないように、顔を逸らして笑っているつもりだが、バレバレだったので、後で問いただす事にする。
その後、祐希に勝った勢いもあって、模擬戦を全勝し、今日の練習を終えた。
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