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※お知らせ


 この作品をここまで見て頂きありがとうございます。今まで毎日投稿をしてきましたが、次の5章から、土曜日と日曜日の週2回の投稿に変更します。進捗具合によっては更新頻度が上下するかもしれませんが、今後も、駿や果奈だけではなく、美生や直己、隆二が紡ぐ日々を見守って頂けると嬉しいです。




 鈴木君が台所から去った後、美生は結ちゃんに軽く注意する。


「結ちゃん、ちょっと強く言い過ぎだよ」

「…分かりました。今度から気を付けます」

「因みに聞くけど、鈴木君と何かあったの?」

「去年、家の玄関で鉢合わせした時、鈴木さんが落とした袋から変な漫画が見えて…思わず叫んじゃいました」

「そ、そうなんだ…」


 結ちゃんからの言葉に何も返せず、苦笑するしか無かった。


「私には男子の気持ちが全く理解出来ませんよ」

「鈴木君が許せない気持ちも分かるけど、鈴木君自身、この事を反省していると思うから、もう少し優しく接してあげても良いんじゃいのかな?」

「美生姉さんがそう思うのなら、出来るだけそうします…」


 そう言った結だったが、頬を膨らませており、内心では納得していないみたいだった。

 

 しばらくカレー作りを続けていると、駿君が帰ってきた。


 

 ——駿は家に帰って、そのまま茶の間に向かうと、落ち込んでいる直己の姿があった。


「直己、落ち込んでそうだけど大丈夫か?」


 直己の落ち込み具合を見るに、美生との関係が思ったよりも縮められなかったのだと、察する。


「は〜、結ちゃんがまだ俺に冷たくてさ、いつになったら忘れてくれるんだよ…」

「あの事ね、結も頑固なところがあるからそこまで気にしなくても良いよ」


 美生との買い物じゃなくて、結との蟠りで落ち込んでいたのかよと、ツッコミそうになる。


「そんな事よりも美生との買い物はどうだった?」

「最初は会話が続かなかったり、会話の頻度が少なかったけど、一緒に買い物をするにつれて会話が弾むようになって、駿の家に向かう時は一度も途切れる事なく会話する事が出来た」

「良かったじゃん」

「ありがとな駿、この話を持ち出してくれて。こういう機会が無かったら、ずっと島内さんとの距離を縮められないで、もがいていたと思う」

「お礼を言いたいのはこっち。今日は買い物行ってくれてありがとう」

「お礼がてらじゃないけど、1つお願い良いか?」

「良いよ」

「また美生と買い物する機会があったら、俺に行かせて欲しい」


 これを聞いて、自分の事のように、嬉しく感じる。


「う〜ん、流石に毎回は厳しいけど、部活が忙しくなった時はまたお願いしてもらうかも」

「ほんとに!それだけでも有難い」


 直己との話が盛り上がっていると、台所から美生の声が聞こえてる。


「夕飯出来たよ〜」

「分かった、今行く。俺達も準備するか」

「そうだな、島内さんカレー楽しみだな〜」

「美生のカレーはめっちゃ美味いから直己が食べたらぶっ飛ぶと思うよ」


 それを聞いた直己は今日の給食のメニューがカレーだと知った小学生のように、目を輝かせる。


 その後、皆んなで協力して、夕飯の準備を終わらせた。


 食べる前に結は福神漬けを取って自分のカレーに入れた後、駿でも美生でもなく直己に福神漬けを渡そうとした。


「す、鈴木さん、福神漬け要りますか」


 結はほんの少し、恥ずかしそうに目をそらしていたが、声には柔らかさが戻っていた。


「ありがとう、結ちゃん」

「どういたしまして…」


 その様子を見て、美生と共に安堵の表情を浮かべた。


 福神漬けを入れ終わり、カレーを食べ始める。


「うん、今日のカレーも美味しいよ」

「ありがとう」

「私が切った野菜がちゃんと活きていて美味しい」

「野菜切るの手伝ってくれてありがとね、結ちゃん」


 それぞれがカレーの話をするなか、直己だけ何故か黙っていた。


「直己、黙っているけど大丈夫か?」

「もしかして、鈴木君の口に合わなかった?」


 無反応の直己に心配したが、その直後、大きな声で話し出す。

 

「島内さん、めっちゃ美味いよ!」

「そ、そう、なら良かった」


 突然に大きな声を出したせいか、美生は戸惑いながら、応えた。


「いきなり大きい声出すなよ、びっくりするじゃんか」

「・・・・」


 そんな直己の反応を見た結は顔をしかめる。


 最終的に直己はカレーを3回おかわりして、4人は夕飯を食べ終える。


 その後、洗い物をやり終えると、直己と美生は帰ろうとしていた。


「また明日ね。駿君、結ちゃん」

「じゃーな駿、結ちゃんもまた」


 直己からの言葉に結は控えめに頷く。 


 2人が家から出た直後、バレないように近くのところまで見送る。

 その様子は会話がとても弾んでいるみたいでとても楽しそうに見えた。


(頑張れよ直己、応援してるからな)


 2人の姿が見えなくなるまで見届けて、家へと戻る。


 雨は降っていなかったが、雲が夜空を覆っており、少しだけ温かい夜風が頬をなでた。

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